産後復帰間もない頃、思いがけない転職の誘いが

 これまでの自分のキャリアを振り返ると、一番の核となったのは、ユニリーバで働いていた時代です。「マーケティングスクール」と呼ばれるほど人材育成に力を入れている会社で、すごく育てられましたし、最終的には女性で初めての取締役に選んでもらいました。

 ユニリーバはもともと、広告代理店で私が4年間担当していたクライアントでした。一緒に仕事をしてきたユニリーバのブランドマネジャーが昇進することになり、後任を社内で探したけれど適任がおらず、私に声をかけてくれたんです。

 当時私は娘を出産したばかりで、転職なんて想像もしていませんでした。でも一方で今後のキャリアを考えたときに、製品開発や戦略的なことも含めて、もっとマーケティング全般に携わりたいという思いを持ち始めていた時期でもありました。今後いつチャンスがあるか分からないし、ゼロから新しい会社へ移るのではなく、ブランドのことも働いている人のことも分かっているところへ行けるのは、とてもいい話ではないか。そう思って移ることを決めました。

 ところがユニリーバに行ってみたら、とんでもない状況が待ち受けていました。

「楽器の練習はコツコツ、ではなく本番前にあせって必死になるタイプです」
「楽器の練習はコツコツ、ではなく本番前にあせって必死になるタイプです」

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取材・文/谷口絵美(日経xwoman ARIA) 写真/鈴木愛子

小出寛子
三菱電機社外取締役
小出寛子 1957年生まれ。東京大学文学部卒業。外資系広告代理店を経て93年に日本リーバ(現ユニリーバ・ジャパン)入社。マーケティングディレクターなどを務め、2001年に同社で女性初の取締役に就任。パルファン・クリスチャン・ディオール・ジャポン代表取締役社長、Newell Brands社米国本社シニア・ヴァイスプレジデントなどを経て、16年から現職。他にJ-オイルミルズ、J.フロント リテイリングの社外取締役も務める。21年6月、一般社団法人Music Dialogue理事に就任。