演奏家と観客が、音楽を通してつながる体験
コンサートに出演してもらっているのは、やる気のある若手の演奏家が中心です。主催者が提供してくれた場所に身一つで出掛けていって、どんな条件の下でも演奏し、目の前のお客さんに音楽を届ける。これはただ呼ばれたところへ弾きに行くという意識では通用しません。みんな鍛えられますし、本当に力のある人たちばかりです。クラシック音楽のことは分からない、ちゃんと聴くのは初めて……そんな人たちが、理屈抜きで心を揺さぶられて涙を流したり、感動にほおを紅潮させたりする。演奏家という人間と観客という人間が、音楽を通してつながっていく瞬間です。それが音楽の最大の魅力ではないでしょうか。
間近に聴いたヴァイオリンの音色に衝撃を受け、初めてクラシック音楽の素晴らしさを肌で感じた……だからといって、40年身を置いたビジネスの世界から離れて音楽の財団を立ち上げるなんて、思い切った行動に見えるでしょうか。
私自身は、ビジネスの世界にずっといたいなどとは全く思っていませんでした。第一線で働いていた50歳の頃から、「人生最後の直線距離は、これまで生かされてきた社会への恩返しのために走りきらなくてはいけない。そのためには何をすればいいか」ということを考えていたんです。
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⇒一線を退く50歳からの生き方が「人生の豊かさ」決める
取材・文/谷口絵美(日経ARIA編集部) 写真/鈴木愛子
一般財団法人100万人のクラシックライブ代表理事