クラシックコンサートの「提供の仕方」が好きになれなかった

 実は今でも、コンサートホールの演奏にはあまり興味がありません。その理由が今の活動を始めてよく分かりました。クラシックのコンサートのプレゼンテーションが、演奏者側の一方通行だと感じるからです。

 40年間金融業界で働いてきて、コンサートを聴きに行く機会は結構あったんです。招待を受けてサントリーホールにもよく行きましたし、ニューヨークに5年、ロンドンに8年いましたから、ニューヨーク・フィル(ニューヨーク・フィルハーモニック)やロンドン・フィル(ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団)といった一流オーケストラの演奏も聴いていました。

 正確に言うと、音楽が嫌いなわけじゃないんです。ただ、狭い座席に2時間も身じろぎもせず座っていなさい、静かに聴きなさい、というのがどうにもつらい。おまけに指揮者も演奏者も黙ってステージに現れ、演奏が終わって客席からどれだけ拍手を浴びても、ほとんどの場合があいさつの言葉を発することもなく去っていきます。ライブで客席とのトークタイムもない音楽なんて、クラシックぐらいじゃないでしょうか。「なぜ、もっと聴く人の立場に立って、伝える努力をしないんだろう」とずっと思っていました。

 あるとき、弦楽器の製作者・修復家として著名な中澤宗幸さんの自宅で行われるコンサートに出掛けることになりました。知人に誘われて、内心「どうせクラシックなんて」と思いながらです(笑)。ところがそこで、ものすごい衝撃を受けました。