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人生はいつもクラシック

「勉強についていけない子」を生む授業、ITで変えたい

(下)「正解は1つ」から「正解は複数ある」学びへ 学校教育の発想の転換を後押ししたい


大学院時代に「教える」と「教わる」に二分化した学びの構造に不健全さを覚え、ITの力で教育のあり方をよりよくしたいと考えるようになった後藤正樹さん。エンジニアとしてのスキルを磨いて協働的、主体的な学びを実現する教育ソフト「スクールタクト」を開発。会社を興す一方で、指揮者としても活動しています。オーケストラと音楽づくりをするときに意識することが、教育事業や会社経営にもつながってくるといいます。

(上)会社経営×プロ指揮者 コードタクト後藤正樹の二刀流
(下)「勉強についていけない子」を生む授業、ITで変えたい ←今回はココ

会社と「オーケストラの音楽づくり」に共通すること

 僕が大学院時代に問題意識を持った「情報の非対称性」の構造は、指揮者とオーケストラの関係にも通じるものがあります。かつての指揮者には、ヒエラルキーのトップに君臨する権力者のようなイメージが強くありました。でも今はそうした指揮者像はなくなってきています。その要因の一つが「楽譜の流通」ではないかと思うんです。

 昔はオーケストラで曲を演奏する際、すべての楽器の音が記されたスコア(総譜)を持っているのは指揮者だけでした。奏者は自分のパートの楽譜しかないので、曲の全体像が分からず、指揮者に頼らざるを得ません。でも今は誰でもスコアを買えますし、ネット上には著作権が切れた楽譜を無料でダウンロードできるサイトもあります。持っている情報が対等になったことでヒエラルキーの構造が弱まり、どちらかというと協働的に音楽をつくっていこうという方向になっています。

 僕も指揮者として、自分が思い描く音楽を奏者に演奏してもらうというよりは、彼らが持っている音楽性をちゃんと把握して、そこと自分の音楽性をどう融合させるかといったことを考えながら指揮をしようと心掛けています。

 指揮者はオーケストラのメンバーから「この部分はどういう風に演奏したらいいですか」「どのくらい音を大きくしていきますか」などと聞かれることが多いのですが、僕が一方的に指示するのではなく、なるべく自身で考えてもらいます。メンバーが相互に音を聴き合いながら、主体的に音楽をつくっていくような方向性に持っていきたい。それは相手がプロでもアマチュアでも変わりません。

 そして、僕がこうした意識でいることをきちんとオーケストラに提示しなくてはいけないなと、最近強く思っています。そこって会社経営と同じなんですよね。会社にはミッションやビジョンがあって、それに照らし合わせて行動基準を作っていきますが、これはどんな活動においても必要なこと。そうしないと、指揮者が変わったらオーケストラが奏でる音楽もガラッと変わってしまう、というようなことが起こってしまいます。

 会社であれオーケストラであれ、組織として自分たちが大切にしたい原理原則を言語化して、それに基づいてみんなで判断していきましょう、という風土をつくる。会社でリーダーとして実践できているかというとまだまだですが、指揮をやっていてこれはいいなと思ったマネジメントやリーダーシップの方法は、会社でも取り入れようと思っています。

「オーケストラの奏者一人ひとりをちゃんと見て、どういう音楽性を持っていて、それをどう引き出していくのかを考えていきたいし、会社でもリーダーとして同じようにありたいと思っています」
「オーケストラの奏者一人ひとりをちゃんと見て、どういう音楽性を持っていて、それをどう引き出していくのかを考えていきたいし、会社でもリーダーとして同じようにありたいと思っています」
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