「推理小説的な面白さ」をどう知ってもらうか

 例えばポップスの場合は、聴き心地がよいし、曲の長さも3分程度。その中にサビのフレーズが何度も出てきたりするので、1回聴くとだいだい覚えられる構造になっています。片やクラシックは、もう少し推理小説的です。交響曲は40分くらいと長く、初めに提示された主題となる旋律が、後から少し違う形で出てきたりします。フルートが演奏していたフレーズが、2度目はヴァイオリンに現れて、でもそれはちょっとずつ音が変わっていたり、長調が短調になっていたり。こういった仕掛けや全体の構造は、1回聴いただけではよく分かりません。

 主体的に演奏に耳を傾け、建築物の構造のように、音楽の構造の面白さや美しさを感じることがクラシックの魅力なのですが、そこにたどり着く前に、眠たくなって寝ちゃったりするわけですよね。そうならないために、どんな方法で主体的にクラシックを聴けるようにするのがいいか。そこで考えたのが、ボレロの演奏に参加してもらうことでした。

 ボレロはリズムとテンポが一定なので、曲を知らなくても参加できます。曲に合わせてリズムを刻むことで、おのずと「次はどうなるんだろう?」と、先の展開を意識するようになります。参加した方からも面白かったという感想をもらいました。クラシックを主体的に聴くためのメディアアートは他にもいろいろ作りましたが、またどこかのタイミングで取り組めたらと思っています。

指揮のレッスンを受け、「自分は上達が速いかも」

 指揮に興味を持ったのは高校生になって合唱部に入ったときです。顧問の音楽の先生は吹奏楽部の指導で忙しく、OBの協力を得ながら自主運営しているような形でした。指揮者も各学年から1人ずつ選び、僕の学年は僕がやることに。指揮者になるとプロの先生のところで指揮のレッスンを受けられることになっていました。

 やってみたら、自分は指揮に向いているなと思いました。というのも、人より上達のスピードが速く、高校1年生で指揮を始めて数カ月で、先輩2人を抜いたと思ってしまったんです(笑)。