ビジネスの転機で背中を押してくれたシンフォニー、大切なライフイベントを彩ったアリア…クラシック音楽を愛する各界のリーダー層が、自身にとって忘れられない一曲と共に人生を語ります。今回登場するのは、企業の人材育成や組織開発を支援するタンタビーバ取締役の板谷和代さん。37年間勤めたJALでは、女性初の海外支店長としてウィーン駐在を経験しました。お気に入りの曲がいくつもあって悩ましいという板谷さんが選んだ一曲とは?

(上)JAL初の女性海外支店長「音楽の都だから頑張れた」 ←今回はココ
(下)心を育み、挑戦する機会を与え続けるのが管理職の仕事

 チャイコフスキー、ベートーヴェン、ラフマニノフ……仕事をするときは基本的にクラシック音楽がかかっています。特に、講演で話す内容をパソコンで作っているときは、時々音楽を聴くほうに集中したり、また音楽が聞こえなくなるくらい仕事に没頭したり。メロディーが美しい力強い曲が好きなので、よく聴くのは交響曲です。後は、ピアノ協奏曲やヴァイオリン協奏曲も好きですね。

 母がクラシック音楽が好きだったので、子どもの頃から当たり前のように聴いていて、すてきだなと思っていました。ピアノも習いたかったのですが、当初オルガンしか家になく、「ピアノがない子はうちのお教室はダメです」と言われたのが悲しくて。それだけに、念願かなって買ってもらえたときのうれしさは大きかった。団地の3階に住んでいたので、外からピアノをつり上げて運び入れたんです。確か小学4年生の頃。その光景はいまだに鮮明に覚えています。

 好きな曲がたくさんあるので一曲を選ぶのが難しいのですが、やっぱりベートーヴェンの「第九」でしょうか。この曲には、日本航空(JAL)時代の忘れられない出来事が関係しています。

2000人の大合唱団の1人としてサントリーホールで歌った

 1988年1月17日、サントリーホールで「第九 2000人のコンサート」というものが行われました。半官半民だったJALが民営化したのを記念し、世界中で働く社員2000人が集まって、制服姿で「歓喜の歌」を歌ったのです。私もソプラノの一員として参加しました。