湘南をベースに多方面で活躍する女性たちに、湘南在住のライターが「身体、精神、社会的により良い状態であること」を指す「Well-beingな生き方」をテーマにインタビューする連載。今回取材したのは、社会貢献や環境保護を表現した“エシカル”という概念を日本で広め、エシカルファッションやソーシャルビジネスをけん引している林民子さん。鎌倉移住のきっかけや日々の暮らし、仕事や幸せな歳の重ね方について聞きました。

(上)人が人を呼ぶ街、鎌倉から「エシカル」を発信
(下)がんや老いとの向き合い方は自分の価値観に頼る ←今回はココ

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林民子 人が人を呼ぶ街、鎌倉から「エシカル」を発信


自然豊かな場所で、自分と向き合う

―― 前編では、鎌倉に住むことになった理由や、林さんのライフワークについてお話を聞きました。林さんは2度の大病を経験しているそうですが、病気を患ったことと、鎌倉へ移住したことは少なからず関係しているのでしょうか。

 そうですね。大病を経験したからこそ、なおのこと自然に囲まれた環境で過ごしたいと思いましたし、実際に、病気が治癒していく過程においても、この環境が良いほうに作用したと感じています。自分と向き合う時間を持つことができましたから。

鎌倉へ越してからオン・オフが明確になり、切り替えがうまくなったという林さん。「自分と向き合う時間を持つことができました」
鎌倉へ越してからオン・オフが明確になり、切り替えがうまくなったという林さん。「自分と向き合う時間を持つことができました」

―― 病気のことについて聞かせてください。

 2度にわたり、がんを患いました。1度目は2011年、東日本大震災の年です。当時は東北の支援活動で本当に忙しくて。自分の身体をおざなりにしてしまっていたのでしょう。軽い気持ちで区の検診を受けたのですが、直後に電話がかかってきて「すぐに精密検査してください」と言われました。

 病院で精密検査を受けたところ、ステージ1の子宮頸がんという診断でした。お医者さまからは「全摘しましょう」と言われ、さらにショックを受けました。セカンドオピニオンを受けようと別の病院を受診しましたが、そこでも答えは同じでした。けれども結果的に、全摘をせずにがんを克服することができました。

 2度目のがんは、2年ほど前です。海外出張から帰国した際、突然吐血してしまい、病院で検査をしたところ胃潰瘍と診断されました。その後の再検査で胃がんが発覚し、ステージ1という診断を受けたんです。そして、ここでもお医者さまからは「全摘」という言葉を聞かされました。