「右肩下がり」の味わいを感じられるようになった

 核家族で育つと、おじいちゃんおばあちゃんがそばにいる暮らしが経験できません。ひとりの女性として、自分自身も歳をとっていくわけですが、歳をとるってどんなだろう、という身近なモデルがいない。ある日いきなり「あなたは親の介護をしてください」と、赤紙が届くイメージで始まるような……。さらにマスコミの報道からは、不安を煽るような情報だけが押し寄せる。

 そんな現状のなかで、「老い」というものを、視界のどこか身近なところにある日常を作りたくて「はっぷ」の活動を始めたんです。

 数年前までは、報道でもなんとか認知症を治せないか、予防できないか、という部分がハイライトされていましたが、ここ最近は、治すのはどうやら難しいかもしれないということが分かってきました。90歳を超えたら二人に一人は認知症になるというデータもあって、認知症じゃないほうが珍しいくらいです。であれば、認知症になっても大丈夫、というところから始めたらいいんじゃないかな、って。

 実際、お年寄りの皆さんと一緒に働いていると、印象がどんどん変わってくるんです。人と人として接していくことで、見えるものが全然変わってきますし、老いに対するイメージが全然違ったものになってくるんです。

―― 大橋さん自身は、「はっぷ」の活動を通して、意識の変化などありましたか。

大橋 私自身お年寄りと過ごすなかで、歳を重ねることに対しての意識が変わりました。これまでのような「右肩上がり」ばかりではなくて、「右肩下がり」の味わいというものがあるんだなと。若い子と同じようには動けなくても、いろんな意味の「良さ」が滲んでくると思うんです。

 「はっぷ」の活動が、「ああ、いいよね、歳をとるって」と、そんな風に思えるような街にするための小さな働きとなればうれしいですし、個人的には「良いシワ」を増やしていきたいですね。

「認知症になっても大丈夫、というところから始めたらいいんじゃないかなって」