創業1905年、洗顔石鹸(せっけん)やボディソープなど化粧品の製造販売を手がけるマックス(大阪府八尾市)の5代目社長、大野範子さん。近年では女性社長といえば“起業”をイメージしますが、大野さんが先代の父親から会社を継いだのは36歳の時。その後、5回のがん治療という闘病生活を乗り越えながら、会社を新たなステージに導いてきました。2回目は、闘病がきっかけとなった新商品の開発ストーリーや、モノがあふれる時代に消費者へ届けるための企業努力について聞きました。

(1)「レモン石鹸」100年企業を継いだ社長の決断
(2)がん闘病きっかけに新商品 ←今回はココ
(3)ステージ4含む5回のがん治療と経営

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大野範子 「レモン石鹸」100年企業を継いだ社長の決断


がんになって、会社の行くべき道が見えた

―― 30代後半、自身が抗がん剤治療で肌トラブルを抱えたことから、それを解決する商品を作ることが会社の使命だと気づいたんですね。

大野範子さん(以下、敬称略) 会社の方向性が見えたことで、絶対に病気を治して復帰したいという励みにもなりました。抗がん剤治療は本当に肌が荒れるので、以前からマックスにあったお肌に優しいはずの「無添加シリーズ」も使えなかったんです。添加物が何も入っていないだけじゃだめなこともあるんだ、肌に必要な成分を少しだけ入れて、なおかつ手洗いがしやすい泡はどんな泡なんだろうと考えました。2年ほどの開発期間を経て完成したのが、“素肌にやさしい新発想の石鹸あわ”をうたった「素あわ」というシリーズです。

―― 抗がん剤が肌荒れまで起こしてしまうとは、不勉強で知りませんでした。

大野 お湯すら刺激になるので早くすすぎたい、でも石鹸が残ってまたかゆくなる。世の中にあるものは、洗いやすいけど肌に残りやすいものが多かったので、すすぎが早いけど汚れはちゃんと落ちる商品を開発してくださいとお願いしました。開発の担当者からは「むちゃを言わんといてください」なんて言われましたが(笑)。

大野さんは自身が抗がん剤治療で肌トラブルを抱えたことから、それを解決する商品を作ることが会社の使命だと気づいたという
大野さんは自身が抗がん剤治療で肌トラブルを抱えたことから、それを解決する商品を作ることが会社の使命だと気づいたという