闘病を機に会社の使命を考える

―― それを打開したきっかけが、自身の闘病だったそうですね。

大野 今後も必要とされる会社になるにはどうしたらいいか、その核がないと会社の方向性が定まらないと感じていました。悩みながらも社長に就任して半年たった2009年秋に子宮頸(けい)がんが発覚して、子宮を全摘出しました。病気になって今までできていたこともできなくなり、薬の副作用で人前に出られないほど肌も荒れてしまった時に、マックスの今までの商品では解決できなかったんですね。お風呂で体を洗う時にお湯で流すだけで、ヒリヒリと痛くて辛い。

 そこで、ふと、病気が治って復帰できたら、真剣に肌と向き合った商品を作ろうと思ったんです。お客様の悩みを解決する商品を作る、それこそが社会から必要とされる会社のあるべき姿だと確信しました。そのためには絶対に病気を治して復帰したい。そこからマックスの新しいチャレンジが始まりました。

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100年企業社長の大野範子 がん闘病きっかけに新商品

取材・文/宇野安紀子 写真/花井智子

大野範子(おおの・のりこ)
マックス代表取締役社長
大野範子(おおの・のりこ) 1973年大阪府生まれ。甲南大学卒業後、香料メーカーでの勤務を経て、1999年にマックスへ入社。約10年間、OEMの新規事業開拓を担う。2009年には、父である先代社長の体調不良によって、急きょ36歳の若さで社長就任するものの、直後に5回のがんの闘病生活に入り、入退院を繰り返す。2013年には完全に治療が終了して職場へ復帰。闘病生活の中で得た進むべき道、「肌の悩みを解決するための商品開発」に注力して、現在の経営基盤を支えるヒット商品を生み出す。その経営手法が評価されて、2018年に経済産業省の「はばたく中小企業・小規模事業者300社」や「地域未来牽引企業」などに選出された。