小倉ヒラクさんは、発酵食品を文化人類学の観点から見直してその魅力を伝える「発酵デザイナー」。2018年から2019年にかけて、47都道府県の発酵食品の現場を一人で訪ねました。その中から、今回紹介するのは秋田を代表する発酵調味料「しょっつる」。ヒラクさんが訪ねた港では、水揚げされたばかりのハタハタはすぐに作業小屋に運ばれて、地域のお母さんたちが目にも留まらないスピードでしょっつるを仕込んでいきます。

 こんにちは。発酵デザイナーの小倉ヒラクです。僕は発酵文化のスペシャリストとして、日々微生物の世界を探求し、その魅力を伝える活動をしています。

 僕は2018年から2019年にかけて、発酵食を求めて全国47都道府県を訪ねました。この壮大な『日本発酵紀行』については、第1回記事をご参照いただくとして、第3回となる今回は、東北の発酵王国、秋田を紹介します。秋田といえば、僕が分類する「海の発酵」を代表する、ハタハタを使った発酵食品が名物です。秋田県民のソウルフード、ハタハタの文化の魅力を語ろうではないか。それでは行ってみよう!

冬の日本海は静かに燃えている…!

 秋田県の西岸部、日本海に面した港には、冬のごく短い時期ハタハタという魚の大群が押し寄せてきます。僕が訪ねたのは白神山地近くの八森地区。まっっっったく観光地感のないローカルな港の堤防に、電線に並ぶスズメの群れのようにローカルピーポーが釣りに熱中する姿が。彼らは皆、ハタハタの一本釣りを狙っているのですね。

八森はハタハタ漁で栄えてきた漁業の町。後ろには白神山地が控えている

 このハタハタ、漢字では「鰰(神の魚)」と書くように、突如として冬の海を埋め尽くす豊漁のシンボルとして秋田県民のソウルに深く深く刻み込まれた存在。このハタハタが押し寄せる数週間は、港全体が異様な「ハタハタフィーバー」に包まれる熱狂の季節。冬の日本海は静かに燃えている……!