街場の寿司屋でもワインを飲む!

 ブドウ畑とワインの醸造現場を訪ねた後は、県庁所在地の甲府の街へ移動しましょう。目指すはお寿司屋さん。ここでローカルワインを堪能するのだ……!

(なお、海のない県・山梨ですが、なぜか街中にお寿司屋さんがたくさん。なぜ? と思いますが、実はお寿司はそもそも魚介の保存食として生まれたので、海から遠いところで発達するのは理にかなっていたりするのです。詳しくはまた別の話で)

 僕の行きつけは、善光寺駅すぐ近くの「豊鮨」。一見昔ながらの街場のお寿司屋さんなのですが、大将が山梨ワインのエキスパート、女将が中華料理の名人、息子が創作料理の達人、そのパートナーがパティシエールというハイコンテクストすぎる名店。地元のおじさんおばさんから県外のFOODIEな若者まで幅広い客層でにぎわっています。

豊鮨
所在地/山梨県甲府市善光寺1-12-7
交通/JR身延線 善光寺駅から 徒歩3分
営業時間/11:30~14:00、17:30~22:00、水曜定休
電話/055・233・1216
山梨ワインに詳しい豊鮨のご主人(右人物)。お勧めを相談してみよう(写真/BEEK)
山梨ワインに詳しい豊鮨のご主人(右人物)。お勧めを相談してみよう(写真/BEEK)

 ここでは、いきなり握りを頼むのは一般的ではなく、お酒にあわせてつまみを色々とオーダーし、締めに何貫か握りを食べる、というスタイルが山梨流。
(ちなみに僕はお母さんの餃子が大好き!)

 年季の入った山梨ワインファンのお父さんに「この季節オススメのワインと、それに合うつまみをお任せで!」と頼むと山梨発酵ヘブンの始まり。しめた魚に「甲州」の白ワイン。地元の定番・マグロのブツ切りを一工夫したおつまみに微発泡の赤ワインなど、異次元のマリアージュが堪能できます。鮮度で勝負できない土地だからこそ、料理人の「一工夫」が際立つ山梨のお寿司。そこにこれまた独自の味を醸し出すローカルワインをあわせると、世界のどこでも味わえない唯一無二の食体験ができてしまうのです。

 で、夜9時頃の中央線特急に乗れば1時間半ほどで都心に帰れてしまうんだよ。日帰りの発酵ツーリズム in 山梨。思い立ったらすぐに出発!

文・写真・イラスト/小倉ヒラク