還暦でライフネット生命を開業し、現在は立命館アジア太平洋大学(APU)の学長を務める出口治明さん。1万冊以上の本を読破した「知の巨人」であり、歴史にも造詣が深いことで知られています。これまでの2回の記事で、日本でダイバーシティや女性活躍が進まない理由を「リーダーが社会構造的に不勉強だから」と繰り返し指摘してきました。では、リーダー層は今何をどう学べばいいのでしょうか。日経xwoman総編集長の羽生祥子が聞きました。

管理者研修で、ファクトベースの正しい知識を教える

日経xwoman総編集長 羽生祥子(以下、――) 前回までに、企業にクオータ制を導入すべき理由や、多様性の大切さなどについてお話を伺いました。企業が今すぐに社内を改革したいと思ったら、何ができるでしょうか。

出口治明(以下、出口) まずクオータ制を導入することです。その次に管理者研修ですね。コンプライアンス研修と同等の重要度で、ジェンダー研修を実施すべきです。

立命館アジア太平洋大学(APU)の学長を務める出口治明さん
立命館アジア太平洋大学(APU)の学長を務める出口治明さん

―― 管理者へのジェンダー研修では、どのような内容を取り上げたらいいでしょう。

出口 日本のジェンダー・ギャップ指数121位の問題や、クオータ制の正しい理解、なぜ家制度に象徴される男尊女卑の考え方や性別役割分業が生まれたのかなど、日本社会の構造問題を歴史から学んで、それをきちんと共有することが大切です。

―― 家庭内と企業内の双方で、性別役割分業を当たり前のものと考えている人もまだまだいますね。

出口 性別役割分業はごく最近に生まれた新しい考え方で、歴史的にみれば日本は女性がリードした国ですよ。皇室の祖先神とされる天照大神は女性と解釈されていますし、日本という国号や天皇という称号が確立されたのは持統天皇という女性天皇の時代でした。

 江戸時代、7代将軍徳川家継が死んで徳川家康の直系の血筋が途絶えたとき、紀州徳川家出身の吉宗が8代将軍に就いたのは、6代将軍家宣の妻(天英院)が吉宗を推薦したからです。将軍を決めるほどの実力を女性が持っていたのです。