死活的に重要なジェンダー平等の真意

―― ジェンダー平等はSDGsの目標の達成において「死活的に重要」な貢献をするものとのことですが、具体的にはどのように貢献するのでしょうか。

只松 大きく2つあります。1つは、意思決定機関のガバナンスを向上させること。もう1つは、レジリエンスを向上させることです。これらの2つは、不確実性が高い将来においても持続可能性を向上するために不可欠な要素です。

 ガバナンスの向上とは、前回「多様性が低い組織が陥りがちな『グループシンク』の罠」でも話した通り、「グループシンク」に陥ることを回避することで、重要な利害関係者(政府の場合は国民全体)に不利益を生じさせる間違った判断を避け、逆に利益を生むような正しい判断ができるようになることを指します。

 メンバーの属性に偏りがある意思決定機関では、メンバーに含まれないマイノリティーへの配慮が欠け、格差を拡大させる傾向がありますが、意思決定機関に多様性を持たせて、多くの利害関係者の意見が反映されることには、格差拡大を是正する効果があります。格差の問題は、SDGsのすべての目標達成における阻害要因です。

―― もう1つの効果が「レジリエンス」の向上ということですが、レジリエンスという言葉は最近よく耳にするようになりましたね。

只松 レジリエンスとは「しなやかな再起力、復元力」などと訳されることが多いです。ここで重要なのは「しなやかな」の部分です。「柔軟な」とも言い換えることができます。なぜしなやかさや柔軟さが強調されているかというと、世界の不確実性が高くなり続けていることが背景にあります。

 コロナのような疫病や気候変動、AI(人工知能)に象徴される技術革新、人口動態の変化、グローバル化など、不確実性は高まる一方です。こうなると過去の成功体験や前例にとらわれない、画期的かつ創造的なアイデアが求められるのです。そのためには、できるだけ多くの人の英知を結集することが重要になってきます。そこで多様性が重要になるというわけです。

―― 意思決定機関の多様性が正しい判断につながるとすれば、レジリエンスを向上させるにも、まずは意思決定機関の多様性が重要ということが言えますね。

只松 その通りです。日本は様々なグローバルのリポートにおいても、特に「意思決定機関の多様性の低さ」を指摘されています。そしてそれは確実に日本社会におけるジェンダー格差を拡大させています。

 日本女性の平均賃金は男性より25%低いという状況で、G7の中で最低ですし、シングルマザー世帯の相対的貧困率は32%で、その子どもの約2人に1人が貧困に苦しんでいるという状況です。ジェンダー格差が拡大すれば、女性が意思決定プロセスに参加できる可能性がさらに下がるという負の連鎖を生み出します。そうなると、もちろんレジリエンスも向上しません。