おばあさんがしば刈りに行ってもいい

―― 今、アンステレオタイプというキーワードが出てきましたが、ステレオタイプというのはいわゆるジェンダーでいうと「女らしさ、男らしさ」といった考え方を示していますよね。

石川 性別役割分担というと、例えば「桃太郎」の初めの部分を思い出してほしいのです。「おじいさんはしば刈りに、おばあさんは川に洗濯に行きました」という部分を、UN Women的に突っ込むとすれば、「本人が望むのであれば、おばあさんがしば刈りに行ったっていい。おじいさんが洗濯に行ったっていい。二人で一緒にやったっていいんじゃないの? どうしてそういうふうに性別で役割を決めつけてしまうの?」ということなんです。

 こうした性別役割分担などの固定観念について、われわれが注目したのは広告の力なんですね。商品やサービスを売るために、もしくは消費者の関心を引き付けるために、広告に携わっている方たちは素晴らしい知見と経験を持っているわけで、それが固定観念を変える大きな力を持っているのではないかと思ったのです。広告制作側は、クライアント企業と組んで制作するわけですから、やはりそれは広告主である企業が取り組みの先頭に立つべきだとUN Womenは考えました。

―― 広告ポリス的に、「この表現では駄目だ」と見回るような活動だと誤解されたくないと言っていましたね。

石川 はい、そうです。よく「炎上広告を作らないための取り組み」だと誤解されます。ジェンダーに偏見のあるような広告を作ることはもちろんよくないことなので、それを撤廃していくことも目的なのですが、それ以上に大切なのは、「今までの固定観念を破るような広告を作っていこうよ」「みんなでそれを推進していこうよ」というポジティブな力になることです。

―― 本日5月15日、UN Womenはアンステレオタイプ アライアンスの日本支部発足を発表しました。私ども日本経済新聞社、日経BPの日経グループも共同して、共に第一歩を踏み出します。

石川 ありがとうございます。2017年、国連とグローバル企業がパートナーになって取り組んでいるアンステレオタイプ アライアンスの事業が始まり、その後、この事業を補完するかたちで各国で新たな動きが生まれています。ブラジル、トルコ、南アフリカ共和国で国内支部ができています。グローバルな流れをつくることも大事なのですが、それぞれの国によって、広告の事情も違えば炎上するポイントも違うため、それぞれの国の人たちの賛同をもって取り組んでいくことが大事だということをわれわれは考えています。

 日本は、世界で第3の大きな広告業界のマーケットでもあります。この日本が動けば、世界が動き出すという期待もあります。今回、日経グループと日本アドバタイザーズ協会と一緒に日本支部を立ち上げることになり、日本の数社からも「参加したい」という声を頂いています。今後も参加企業を求めていますので、これをご覧になった企業の皆様、興味があればぜひ私たちと一緒に、広告を使ってSDGsの5番目のジェンダー平等を達成するために努力していきましょう。

※ 次回に続きます。

【「日経WEPコンソーシアム」サイトを開設しました】
日本経済新聞社・日経BPは、2020年春に「日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト(WEP)」を始動させました。ジェンダー平等は日本の組織の成長に不可欠との信念を持ち、実践しているキーパーソンにインタビューしていきます。さらに、大型イベントの開催、勉強会&ネットワーキング、国連機関のUN WOMENとの連携など、当コンソーシアムで発信していきます。ぜひこちらのサイトをご覧ください。

石川雅恵(いしかわ・かえ)
石川雅恵(いしかわ・かえ) UN Women日本事務所 所長・関西学院大学社会学部卒。オレゴン大学国際学部学士。神戸大学大学院国際協力研究科法学修士。同大学院博士課程在籍中に外務省専門調査員試験に合格し、1998年より日本政府国連代表部専門調査員。国連児童基金本部コンサルタント、国連人口基金広報渉外局資金調達部を経て現職。

構成/小田舞子(日経xwoman編集部) 写真/鈴木愛子