「聴く力」で組織をエンパワーし続ける、サンリオエンターテイメント代表取締役の小巻亜矢さんとエール取締役の篠田真貴子さんが、「聴く極意」を語り尽くす全5回の連載。最終回は、2人が部下との対話でどんなことに気を付けているのか? 聴き方のコツをたっぷりと伝授。クライマックスには2人が感極まるシーンも。最後まで読み逃しなく!

テレワーク時代に重要度が高まる1on1

編集部(以下、略) 職場でリモート化が進み、業務以外でのコミュニケーションが取りにくくなっている印象がありますが、その場合はどうしたらよいでしょうか?

篠田真貴子さん(以下、敬称略) 短時間でもいいので、1on1(1対1)ミーティングの機会をつくるのがおすすめです。オンラインでも人数が多い会議だと、場を共にしたという感覚が薄れていくので、1対1の密なコミュニケーションが必要かなと思います。特に新しくチームに加わったメンバーは、まだ関係性がつくれていないので、定期的に対話の時間を持つといいと思います。

小巻亜矢さん(以下、敬称略) 私も同感です。人数が多いリモート会議だと話をしている人の反応しか見えない場合が多いので、それ以外の人はどう感じているのかが分かりづらいと感じます。1対1で話すことによってグッと距離が近くなれるので、対面でもオンラインでも個別に接点を持つことがとても大事だと思います。

「聴く」について、2人の体験を交えて考察したこの連載もいよいよ最終回。最後は、小巻さん(右)が小学校に実習に行ったエピソードを聴いて篠田さん(左)が涙し、小巻さんももらい泣きする…という思わぬ展開に。聴くことの奥深さを実感しました
「聴く」について、2人の体験を交えて考察したこの連載もいよいよ最終回。最後は、小巻さん(右)が小学校に実習に行ったエピソードを聴いて篠田さん(左)が涙し、小巻さんももらい泣きする…という思わぬ展開に。聴くことの奥深さを実感しました

―― 部下やチームのメンバーと1on1で話すときに気を付けていることはありますか?

篠田 まずは相手が思っていることを自由に話してもらうということです。例えば、「今、こういうことで悩んでいて、ここで行き詰まっているんですよね」と言ってきたときに、自分の頭の中ですぐに「こうすればいいじゃん!」と解決策が浮かんでしまうんですけど、それを言わないようにしています。なぜなら、状況が分からないままに勝手にこうだろうと瞬時に判断したことは、半分ぐらいの確率で間違っているからです。

 面談で30分の時間を取っているとしたら、とにかく「最初の15分間は相手の話を聴く」と機械的に決めてしまって、相手が何に悩み、何につまずいているのか、その人の立ち位置から見えている景色を理解するように心がけています。その上で「それって、どういう流れでそうなったの?」と、なぜ相手がその立ち位置に居るのかを一緒におさらいさせてもらいます。

 いきなり助言をするのではなく、「例えば、そのときってこういう可能性(選択)はあったかな?」と問いかけていくと、本人がハッと気づいて次へのアクションが見つかることも多いです。