「聴く力」で組織をエンパワーし続ける、サンリオエンターテイメント代表取締役の小巻亜矢さんとエール取締役の篠田真貴子さんが、「聴く極意」を語り尽くす全5回の連載。第2回では、二人がどのようにして「聴く力」を身に付けていったのか? 「聴くことへの学び」について語ります。篠田さんが大きな学びを得た2冊の本、小巻さんが聴くという行為には「相手の人生を変えるほどの威力がある」と気付いたエピソードとは?

実は・・・人の話を遮って主張するほど、聴けない人間でした

編集部(以下、略) 前回は、聴く力の大切さに気付いたきっかけについて聞きました。では、その後、どのようにして「聴く力」を身に付けていったのでしょう。

篠田真貴子さん(以下、篠田) 今でこそ「聴くこと」をテーマに、さまざまなメディアで発信していますが、もともとはまったく人の話が聴けない人間でしたし、今も発展途上です。米国でMBAを取得後、外資系企業で長年働いてきたのですが、当時は「交渉の場でいかに相手を説得するか?」「会議の場をいかに自分が支配して、手綱を握るか?」に注力してきたんですね。相手の話を遮ってまで主張することも多かったですし、知らないことについて“知ったかぶり”をすることがよくありました。

 もし自分が巧みに交渉できなかったら、あるいは知識不足があからさまになってしまったら、価値がない人間だと思われてしまうかもしれない。だからこそ、発言力を高めて優位に立とうとしていたんじゃないかと。かつて私が職業人として目指してきたベクトルは、「聴く」という行為からどんどん遠ざかっていたなと思いますね。

初回は、「自分が思うほど、人の話を聴けていない」という意見で一致した2人。どのように聴く力を磨いたのでしょうか
初回は、「自分が思うほど、人の話を聴けていない」という意見で一致した2人。どのように聴く力を磨いたのでしょうか

小巻亜矢さん(以下、小巻) 篠田さんのお話を伺ってすごく共感できるというか……。ビジネスの真剣勝負の場では、聴くことが一見、「負け」のように感じてしまうこともありますものね。特に「前に出ていくこと」が良しとされるカルチャーでは、なおさら「聴く」ことよりも「話す」ことのほうが重要視されそうです。そうした環境下で培ってきたコミュニケーションスタイルを転換させていくのは、相当大変だったじゃないでしょうか。