45歳で「私は何も聴けていなかった」と気づいた

小巻 私の目が覚めるきっかけになったのは、自分の意見やアドバイスをするばかりで、人の話を聴けていなかった失敗経験です。30代後半の時に化粧品のセールスの仕事で全国を回っていたんですが、その際に多くの女性から、お肌の悩みや生活のことまでいろんな話を聴く場面があったんですね。

 聴いているうちにすぐ答えが浮かんでくるので、思いつくままに「こうすればいいんじゃない? ああすればいいんじゃない?」とアドバイスし続けて……。でも、次にその方に会っても何の改善にもつながっていませんでした。よかれと思って一生懸命伝えても、何の力にもなれていないし、むしろお互い時間とエネルギーを消耗するだけで「不毛だな」と痛感しましたね。

 もう一つのきっかけは、子どもに対してなんですけれど、以前は子どもの心の声を聴かずに、常に「あれしなさい、これしなさい」と指示命令だらけだったんです。ある時、子どもが心を閉ざしていることにハッと気づいて、これからどう接していこうと悩んでいると、たまたま「答えはその人の中にある」というコーチングのフレーズを目にしたんです。「これだ!」とすごい衝撃を覚えました。

 答えがその人の中にあるというなら、私は相手のことを何も聴けていなかった。人とのかかわり方がまったくできていなかったんだと、45歳の時に初めて気がついて、自分が恥ずかしくなりました。

篠田 そのフレーズに出合ったシーンってどんな状況だったんですか?

小巻 ふと新聞を開いた時に、見出しがバーンと飛び込んできたんです。確かコーチング関連の本の広告でした。その時は雷に打たれたみたいな感覚になって、今思えば神様がそのタイミングで与えてくれたギフトだったんじゃないかと。それからコーチングを学ぶようになって、まさにそこが人生の大きな転機になりました。

※近日公開の第2回では、お二人が「聴く力」をどのように身に付けたかについて聞きます。お楽しみに。

続きの記事はこちら
小巻亜矢×篠田真貴子 「聴く」を学び直した40代

取材・文/伯耆原良子 構成/市川礼子(日経xwoman ARIA) 写真/窪徳健作