意見を挟まず、ただ「聴き合う」ことの豊かさ

篠田 心底、「聴くって大事だなぁ」と気づいたのは実は3年前くらいなんです。前職を辞めた後、1年ぐらいブラブラしている時期があって。ARIAさんが名付けてくれた「ジョブレス時代」なんですけれど(笑)、その頃に知人から「グループでピア・メンタリングをやってみない?」と誘われたんです。

 どんなことをするかというと、定期的に3時間ほど時間をとって、とにかくお互いに自分が話したいことを話して、周りの人はそれを聴くという場だったんですね。それによって何かが解決したわけではありませんが、ちょうどキャリアの大転機の最中で、精神的にも揺れ動く時期に自分の想いをありのまま話せたこと、それをそのまま受け止めてくれる人たちがいたことは、すごく支えになりました。

「場に応じた適切な聴き方があるはずなのに、学校で教わったことがある人はほとんどいないんじゃないでしょうか」(篠田さん)
「場に応じた適切な聴き方があるはずなのに、学校で教わったことがある人はほとんどいないんじゃないでしょうか」(篠田さん)

篠田 私がジョブレスであることに周りの皆さんが興味を持ってくれて、1対1でお話しする機会を持てたことも大きかったですね。話を聴いてもらう中で、自分がこれからどういうことをやっていきたいのか、少しずつ言葉にできるようになりました。私が正直に打ち明けるものですから、相手も「実は人生の大きな決断に直面していて」と思いを話してくれて、何か深いところでつながった感覚も度々ありましたね。

 お互い意見やアドバイスをするわけでもなく、「ああ、そうなんですね」とお互い聴き合う時間の豊かさをその頃にいっぱい体験して。「聴くってそういうことなんだ!」と気づくことができましたし、その時間の積み重ねが今の勤務先である「エール」とのご縁にもつながったんだと思います。