真矢 いくら自分は間違っていないと思っても、ギチギチに相手を責め過ぎない。逃げ場を作っておくことは重要だなと感じますね。もう一つ意識しているのは、どんな激しく言い合いをしても、最後には必ずポジティブな言葉で締めくくること。

夫婦ゲンカの最後にパートナーに伝えること

真矢 例えば、「いろいろ言ったけれど、こういう部分に関しては、あなたにすごく感謝しているからね」とか「これからもいい関係でいたいと思っているよ」と伝え、責めっぱなしで終わらないようにしています。ケンカはしても、最後はやっぱり、相手への思いやりで締めくくりたい。「これからもいい関係でいたい」「あなたのことが大事」ときちんと示して伝えることは、相手に対する礼儀だと思うので。

―― それができると、ケンカの後味は違いますね。とはいえ、ケンカ中は、つい感情的になって相手を言い負かそうとしてしまうケースも多いかと……。真矢さんはそんな時、どうやって感情をコントロールされるのでしょう?

真矢 相手を責めたとき、「今、私は言葉という銃弾を持ち出したな」という感覚を持つように心がけています。鋭い言葉を相手に放つのは、結局、相手に銃弾を飛ばしている状態と同じなんですよね。

―― 確かに、言葉は人の心を壊す場合もありますよね。相手が家族でも、大人ならではの「ケンカのお作法」でコミュニケーションをとることが大事、ということですね。

真矢 それは、友達や仕事仲間でも同じだと思うんです。若い頃は意地を張ってしまって、自分にとっての正論を直球でぶつけたり、素直な気持ちをそのまま言えなかったりしたけど、40歳を過ぎたあたりから、余裕が出てきたのか、徐々にできるようになりましたね。そもそも「相手の立場を考え、意思を尊重する」姿勢は、母から学んだんです。

 もともと母は、子どもであっても一人の人間として私を扱い、「あなたの人生はあなたのものだから、謳歌(おうか)しなさい」と言っていました。習い事も無理強いされたことはありませんでしたね。ただ、そんな母から唯一「これはやっておいた方がいい」と薦められたのが、習字です。昔の人だから、文字は人柄を表すという考えがあったのでしょうね。学生時代は、「日ペンの美子ちゃん」のペン習字をやっていました。

―― 「日ペンの美子ちゃん」! ARIA世代にとっては懐かしい響きです。