夫と母と3人暮らし 部屋から着飾って出てくる母の姿

真矢 母は、自分の部屋から出てくるときに、ものすごく着飾った状態で出てくるようになりました。「これから寝るだけなのに、なぜ?」というほどおしゃれをして、まるでミラノコレクションの会場かのように、廊下を歩くんですよ(笑)。その様子がパロディーみたいでおかしくてね。おしゃれな部屋着ばかりを買うようになって、母はすごく生き生きとしていましたね。

 母は、夫のことがとにかく大好きで、舞台でも一番のファンでしたから、3人の暮らしが本当にうれしく楽しかったのだと思います。

―― すてきな時間を過ごして、お母様は幸せだったのですね。

真矢 その後、玄関で骨折したことをきっかけに母は施設に入ることになってしまうのですが、とにかくこの10年は、何か起きるたびに一番大変な人(母)に軸を合わせて、家族みんなで考えながら暮らしのカタチを変えてきましたね。今、振り返っても、夫と私と一緒に暮らしたあの3年半は、母にとっても私にとっても、かけがえのない幸せな時間だったと思います。

母から20代の頃にプレゼントされたカメオ。「カメオは派手すぎず素敵よ…と言われたもののどうお付き合いしたら良いのか分からず、ずっと飾り棚の中に。大人になった今、身につける芸術として慎ましくそして奥深さを感じています。今は、いろんな場に私と同行してくれている母からの色褪せぬメッセージです」(写真/真矢さん提供)
母から20代の頃にプレゼントされたカメオ。「カメオは派手すぎず素敵よ…と言われたもののどうお付き合いしたら良いのか分からず、ずっと飾り棚の中に。大人になった今、身につける芸術として慎ましくそして奥深さを感じています。今は、いろんな場に私と同行してくれている母からの色褪せぬメッセージです」(写真/真矢さん提供)

夫婦げんかをしても揺らがない夫との関係

―― バレエダンサーの西島数博さんと結婚して、今年で11年目。同居のエピソードからも絆の強さを感じますが、いつまでも仲のいいパートナーでいるために、夫婦で決めているルールはあるのでしょうか?

真矢 ルールというのは、特に決めていないんです。うちは2人とも無理強いするのもされるのも苦手なタイプ。相手を尊重するという価値観が合って結婚したので、暮らし方は結婚前とほとんど変わりません。会いたい時に友達に会いに行くし、やりたいことをさせてもらっています。無理に相手の人間関係に合わせて人付き合いするといったこともないので気楽です。人に対する距離感や考え方が似ているのでしょうね。

―― 心地よい距離感が円満の秘訣なのですね。時にはケンカをすることも?

真矢 もちろんありますよ、実は昨晩もケンカしたばかりなんです。私は「ごめんね!」とすぐ謝ってしまうタイプなので、夫には「心がない」と言われることもあります(笑)。

 私の中では、彼の人間性に対して絶大な信頼感があるし、彼の良さを誰よりも知っていて「この人のことが好きだな」と常に感じているので、どれだけヒートアップしても、2人の関係性が揺らぐことはないと信じています。8割割のゆるぎない信頼感をベースに、残り2割くらいの部分でケンカをする。だから、私にとっては、ケンカもある意味コミュニケーションの一つなんです。夫はどう思っているか分かりませんけどね(笑)。

―― 3人の同居も経験し、揺るぎない信頼関係があるからこそ、思いきりぶつかれるわけですね。

真矢 ただ、そうはいっても、夫婦はそもそも他人様ですから、ケンカをしても最低限のマナーは守るべきだと思っています。

―― 例えばどんなことでしょう?