打席を譲ることは自分のためでもある

真矢 例えば私の場合、正義感にあふれたキャリアウーマンをハマり役だと言っていただけることが多くて、それはすごくうれしいし、ありがたいことだけれど、「次の世代の人がやってもいい」と思えるし、私自身、新しいチャレンジをしたいという気持ちは常にあります。

 だから、私もいつでも「この席、空けるね」という感覚は持っていたい。自分だけ目立っていい思いをするんじゃなくて、「私はもうこの景色は見たから、みんなもこっちで見てみて!」と背中を押してあげられる先輩でいたいと思うんです。みんなの表情が輝いていくのを見ると、幸せな気持ちになりますし。

―― 居心地のいい場所に安住しない、と。

真矢 そこに落ち着いてしまうと、自分の成長を止めてしまう。私はそれが嫌なので、3年くらいを目安に、新しいことにチャレンジしてフォーメーションを変えてきました。居心地のいい場所、眺めのいい場所を譲ることは、後輩のためでもあるけれど、この先の自分にとっても必要なことだと思います。

大人の劣等感は大事にする

―― 後輩や若い世代の活躍を応援しながらも、まだまだ自分の至らなさを痛感することもありますよね……。

真矢 劣等感を抱くのは、向上心がある証拠だし、むしろ「謙虚ですてきだな」と好感を持ちますね。自己愛が強過ぎて、周りが見えなくなるほうが危うい。特に、年齢を重ねれば重ねるほど、立場が上がれば上がるほど、注意してくれる人が少なくなってくるから、大人の劣等感は大事にしたほうがいいと思うんです。

 自信がなくて自己嫌悪に陥っている人を見ていると、私はなんだか共感します。「ああ、自分もそうだったなあ。今でもそうだなぁ」と。そして、私も一緒に頑張ろうと思えるのです。

―― 真矢さんは、劣等感なんて無縁かと……。