真矢 「自由な環境は働く人の表情をこんなにも輝かせるんだな」と感じたのが、蜷川実花さん監督の映画『Diner ダイナー』の現場。映画やドラマの撮影現場はほとんどの場合、スタッフは目立たないような黒っぽい格好でいることが多いのですが、『Diner ダイナー』のスタッフの皆さんは、髪の色も服装もバラバラで、個性的でファッショナブル。それぞれが自分のおしゃれを追求して楽しんでいる雰囲気があって、表情も生き生きと輝いていたんです。

 現場に流れる空気も自由でかっこよくて、「ここって海外だっけ?」と思ったくらい。互いに刺激し合いながら、インスピレーションが生まれてくるようなムードを感じ、「トップに立つ人の人間力が山の裾野まで浸透して、一つのカンパニーをつくるんだな」と。

若手を信じてリスペクトする

―― 真矢さんが感じた、トップに立つ蜷川さんの人間力とはどんな部分ですか?

真矢 モノづくりを心から愛し、若いスタッフのことを信じきってリスペクトしているところです。実花さんは、父親である蜷川幸雄さんに、「みんなが右と言っても、自分が左だと思ったら、左に行きなさい」と言われて育ったそうです。とにかく、自分がいいと思うものを信じる、ぶれない信念の持ち主。スタッフ一人ひとりにも、そうした思いが浸透しているんじゃないかなと感じましたね。

―― メンバーを信じきって任せる。リーダーにしてそうありたいと思いますが、いざ日常となるとこれがなかなか難しい……。

真矢 確かに、期待通りにいかない場面が多いかもしれないけれど、それでもずっと信じていると、「この人を失望させちゃいけない」と頑張ってくれる人が出てくるものだな、と。私も、長年の経験から実感しています。

 若い世代の「得意な部分」を見つけてあげるのは、上の世代の役割ですよね。中には、意外なところからそれが見つかることもあって。例えば、飲み会やイベントで人選のセンスが抜群の人っていませんか。「この人とこの人を会わせたら面白そう」というセンスの持ち主は、もしかしたら人事に向いているかもしれない。

―― 組織を率いて、サポートする立場のARIA世代にとって、持っておきたい大事な視点ですね。

真矢 周りを見ていても、そういう人のほうが長く活躍し続けている気がします。年齢を重ねると、自分にとって居心地のいい場所に落ち着きがちだけれど、時には、後輩のために打席を譲る勇気も必要。

愛犬とドライブで栃木のすてきなお店を訪れたときの一枚。落ち着けるカフェでじっくり考えごとをすることも
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