高級寿司屋で女性客の間に発生する「目配せ」

 特に地方都市の寿司名店での遭遇が多いのだが、それは出張先、という「接待以外、ひとり飯当然状態」が背中を押すのだろう(彼女と大将の会話からそのことが分かる)。地方ならばより、女性客に排他的なのでは? との心配はご無用。高級寿司屋のDNAには前述した通り、ニッポンの企業ヒエラルキーが刻み込まれているので、東京本社から来た感十分の女性ひとり客(もし、そうでなくとも、先方はテレビドラマのあるあるキャリアウーマンby天海祐希のイメージを重ねてくれる)は、丁寧に扱われ、それに味を占めたクチだと思われる。

 とはいえ、周囲の女性に聞くと、女ひとり寿司のリアル実践者は非常に少ない。確かに、高級寿司屋のメンズワールドなムードは社会が変化しても存続しており、相変わらずその敷居が高いことは事実。

 例えば、30代妙齢の女子が自分へのご褒美として高級寿司屋に入ったとして、その隣にはいかにも羽振りのよさそうな中年男性と、おごられ必須の自分と同世代の女の子が座ったところを想像してみたい。かつてならば、ひとり女子のほうが、「おごってくれる彼氏がいない」ことを気に病むはずだったが、今では、高級寿司屋に自分のカネで行くことができないおごられ女子のほうが、コンプレックスを持ちそう。これ、男ひとり寿司だった逆の場合を想像すると、この複雑な両者の目配せは多分、無い。こういった女同士の事情に、ほとんどの男性は体験がないだけに寄り添うことができない。と、これ今職場で問題になっている、「え、そんなことで腹を立てているの、女は」というパワハラやセクハラに通じそうな話なのだが、それはまた別の機会に。