逮捕されても終わりが見えない恐怖

 ストーカー規制法が適用してもらえなかったことのなにが問題なのか。加害者が罰せられればそれでいいのではないか。実は私もカウンセラーの小早川先生に指摘されるまでピンときていなかった。ストーカー規制法では被害者に接近することなどを禁止する禁止命令を出してもらえる。これが今のところ、被害者が安心して暮らしていくためのたった一本の命綱なのである。

 相手は、何を言っても説明しても、全く聞き入れずにどんどん怒りを増幅させ嫌がらせをし続ける。私はもちろんのこと警察官や検事、弁護士の説得にも一切応じない。再犯にまで及んだ人間が、刑務所に1年弱入ったところで、私に加害したことを反省したりするだろうか。いやいや。恨みを再燃させて出所したらまた来るのではないかという恐怖が収まらない。逮捕されても、実刑で服役となっても、終わりが見えないのだ。

 それにしても、なぜ加害者の怒りや執着が収まらないのか。恐怖におびえながらずっと不思議でもあった。

ストーカーは行動依存という精神疾患の一つだった

 ストーキングが行動依存という精神疾患の一つであるということを小早川先生や精神科医の福井裕輝先生の著書を読んで知り、ようやく納得した。それならあの異常さも納得できる。そして病気と分かれば治療方法を模索すればいい。本人がやめたいと思ってもやめられなくなっていくのは、薬物依存やクレプトマニア(窃盗症)と同じなのだから。

 ところが17年の時点では、逮捕拘留されたストーカーを治療してほしいと私が言ったところで刑事課の刑事も地方検事も弁護士も、だーれもまともに取り合ってくれなかった。

 治療と引き換えに示談して不起訴にするというならまだ分かるのだそうだ。それはあまりにも被害者を無視した論理だ。被害を受けたことに関して、刑法で定められた分はきちんと罰せられてほしい。そしてそれと同時に治療して無害化してほしいのだ。そうでなければ被害者はずっと不安にさいなまれて生きねばならない。なぜそれが分かってもらえないのだろう。