知っているようで知らない女性の体のこと。気になる性の悩みや婦人科の病気について、産婦人科医でもあり、性科学者でもある宋美玄さんがフラットに語ります。今回のテーマは「女性ホルモンと脂肪の関係」です。

女性の美と健康に恩恵をもたらすエストロゲン

 女性誌でもたびたび「女性ホルモン」の特集が組まれますが、それは女性ホルモンの1つ、エストロゲンが美容や健康にも恩恵をもたらすからでしょう。

 エストロゲンは美容のために分泌されているわけではありませんが、女性らしい体をつくったり、肌や髪のうるおいを保ったり、骨や血管、間接、脳などの健康をサポートする役割を果てしています。だから女性にとって「美と健康の守り神」と言われるのですが、このエストロゲンは脂肪とも関わりがあります。

 エストロゲンには、エストロン(E1)、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)という3つの種類があります。このうち、最も活性が強いのは卵巣から分泌されるエストラジオール。通常、エストロゲン量を測るときはエストラジオールの血中濃度を測定します。エストロンはエストラジオールほど活性が強くはありませんが、閉経前の女性の体内で合成されるエストロゲンの約40%を占めています。さらに、卵巣の活動が消失した閉経後にはエストラジオールが産生されなくなり、主要なエストロゲンはエストロンとなります。

 実はこのエストロン、そのほとんどは脂肪組織によって合成されています。何かと悪者扱いされがちな「脂肪」ですが、エネルギーを蓄えるだけでなく、ホルモンの分泌にも関わるなど、体にとっては大切な機能を担っているのです。

脂肪の役割はエネルギーを蓄えるだけじゃない(写真はイメージ)
脂肪の役割はエネルギーを蓄えるだけじゃない(写真はイメージ)