知っているようで知らない女性の体のこと。気になる性の悩みや婦人科の病気について、産婦人科医でもあり、性科学者でもある宋美玄さんがフラットに語ります。今回のテーマは「子宮」です。

子宮は「考える」「感性が宿る」?

 「女は子宮で考える」「子宮には感性が宿る」「子宮で運気が上がる」などなど。体の臓器の中でも子宮は特に神秘的なイメージで語られることが多いようです。子宮や卵巣は女性特有の器官なので、女性の象徴のように扱われやすいのかもしれませんが、子宮を神聖化することが、ときに女性を追い詰めているとも感じます。

 当然ながら、女性であることは「産む」ことだけに由来するものではありません。がんで子宮を摘出した女性の患者さんから、「子宮を取ったら女じゃなくなると夫に言われました」などという話を聞くと、やりきれないですし、「子宮を見たことあるのか?」と言ってやりたくなります。「生理が終わったら女じゃなくなる」といった言説にも共通したものを感じますが、子宮を取っても、閉経しても、女性であることに何ら変わりはありませんよね。子宮を摘出した人がコンプレックスを感じるような風潮は決して好ましいものではありません。

子宮は大切な臓器ですが、体の器官はすべて大切です
子宮は大切な臓器ですが、体の器官はすべて大切です

 子宮は赤ちゃんを宿すとはいえ、体全体からみると器官の一つにすぎないのに、なぜ神秘化されるのか。こうした感情の背景には、今まで生きてきた中で受けた性教育やドラマ、雑誌の情報などから植え付けられたイメージがあるのでしょうか。どういう情報によって子宮に神秘的なイメージがもたらされるのか、産婦人科医としては興味があります。言ってしまえば「筋肉の袋」にすぎない子宮が過剰にあがめられることを、私は不思議に思うからです。