知っているようで知らない女性の体のこと。気になる性の悩みや婦人科の病気について、産婦人科医でもあり、性科学者でもある宋美玄さんがフラットに語ります。今回のテーマは「更年期の思い込み」です。

 めまい、汗、ホットフラッシュといったよく知られた症状だけでなく、頭痛、肩こり、動悸(どうき)、イライラ、不眠など、更年期障害にはありとあらゆる症状があります。さらには知覚過敏、筋肉痛、のどの渇き、手足のしびれなども更年期症状の一つ。現れる症状は千差万別で人によってかなり違っています。だから、自分の不調の原因がなんなのか分からず、いろいろな診療科を経て最後に婦人科にたどりついたという方も少なくありません。

アラフィフで不調があったら更年期?

 一方で、よく聞くのが、不調を訴えて医療機関を受診してもアラフィフというだけで「更年期じゃないですか」と一蹴されてしまうケース。めまいがするからと耳鼻科にいっても、特に検査もされないまま「婦人科に行ってください」と言われたという患者さんもいました。あるとき、「歯が痛いんですが、更年期じゃないかと言われました」と来院される嘘のような本当の話もありました。めまいであればメニエール病かもしれないし、脳腫瘍や脳梗塞といった重大な疾患の可能性もあります。医師側も思い込みに気をつけなければと思います。

「めまい」「疲れやすい」といった症状は「更年期だから…」と思い込みがち(写真はイメージ)
「めまい」「疲れやすい」といった症状は「更年期だから…」と思い込みがち(写真はイメージ)

 患者さん側も、「更年期だから不調が出ても仕方がない」と考える人は意外に多く、思わぬ病気の見逃しにつながります。生理が極端に不順な場合は子宮筋腫ができている可能性もありますし、不正出血があり、経血過多な場合は、子宮体がんや子宮内膜増殖症など、重い疾患が潜んでいることも考えられます。

 子宮体がんは50代60代に多くみられる病気ですが、最近は増加傾向にあり、40代でかかる人も増えています。その最も多い初期症状は、生理以外のときに性器から出血する「不正出血」なのですが、これが「更年期だから」とスルーされがち。