知っているようで知らない女性の体のこと。気になる性の悩みや婦人科の病気について、産婦人科医でもあり、性科学者でもある宋美玄さんがフラットに語ります。今回のテーマは「親子で話す性のこと」です。

「性」は恥ずかしいことじゃない

 突然ですが、親子で「性の知識」を話題にすることはありますか? 「子どもとは恥ずかしくて、そういう話はしにくい」というお母さんもいますが、それってもったいない。例えば子どもと一緒にお風呂に入るとき、自分が生理だったら……それは「生理」を教える絶好のチャンス。こそこそ隠したりしないで、「大人の女性には生理がある」「赤ちゃんはどこから生まれるか」といったことをさりげなく教えてあげてほしいのです。

 性の知識を知ることは恥ずかしいことではなく、子どもたちが幸せな人生を送るために必要なこと。それに、女の子だったらこの先、痴漢などの性被害にあったり、予期せぬ妊娠に悩んだりすることがあるかもしれませんよね。そんなとき親は、「子どもから頼られる存在」であってほしいと思います。中には「性のことは子どもが自己解決しています」という親御さんもいますが、万が一が起きたとき、子どもの自己解決ではすまないこともあるのです。自分に子どもがいない方も、周囲の若い世代にとって「頼れる大人」であってほしいと思います。

「性について正しい知識を持ってもらうことが子どもを守ること。タブーにしないで正面から伝えてみて」
「性について正しい知識を持ってもらうことが子どもを守ること。タブーにしないで正面から伝えてみて」

学校の性教育では「性交」「避妊」がタブー

 今、ネットやメディアにはいろいろな性知識が氾濫していて、その中には間違った情報もたくさんあります。確かに小中学校では保健体育の授業もあります。が、そもそも文部科学省が定める性教育の指導要領では、「性交」や「避妊」といった言葉は使わないことになっているのです。中学校では妊娠・性情報の対処法・性感染症について学ぶのですが、「セックス」は「性的接触」に置き換えられ、妊娠の過程や経過は取り扱いません。そんな中で、最低限の性知識を持つことは、自分たちの体を守る「ライフスキル」。親が意識して伝えてあげてほしいと思っています。