知っているようで知らない自分の体のこと。女性ホルモンが減少する40代50代は自分の体の変化にとまどうこともあります。気になる性の悩みや体の変化について、産婦人科医でもあり、性科学者でもある宋美玄さんがフラットに語ります。2回目のテーマは「低用量ピルとの付き合い方」です。

避妊だけじゃないピルの効果

 「ピル」というと「避妊」のイメージが強いかもしれませんが、最近は生理痛などの症状を軽くするために低用量ピルを服用する人が増えています。内服することで排卵が抑えられるため、生理痛や過多月経などの悩みが改善します。子宮内膜の増殖も抑えられるので子宮内膜症の予防やPMS(月経前症候群)の緩和にも効果的。さらに、卵巣がんや大腸がんのリスクを下げる効果があることも分かってきています。

 ピルは卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の2種類の女性ホルモンを含んだ錠剤。服用すると、脳は自前で卵巣ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)を作らなくてよいと卵巣に指令を出し、排卵が抑制される仕組みです。

 薬なので副作用が起きる可能性はありますが、20年前から使われている「中用量ピル」に比べ「低用量ピル」や「超低用量ピル」は、含まれているホルモンの量も減って、副作用もだいぶ軽くなったと言われます。

現代女性の子宮は酷使されている

 今、子宮内膜症や女性特有のがんが増えているのは、生理の回数が昔より増えているから。排卵や生理で内膜がはがれるたびに、卵巣や子宮には炎症が起きて負担がかかっています。現代の女性は100年前に比べると生涯の月経数は約2~9倍。昔は妊娠の回数も多かったため、生理がない期間が今より多かったのです。つまり、現代女性はかつてなく子宮を酷使しているということ。ピルで生理の回数を減らすことは、子宮を休ませてあげることになるし、ムダな排卵を抑えて妊娠のタイミングまで卵子を温存することにもつながります。

 新型コロナウイルスの余波で店頭から紙ナプキンが消えたこともありましたよね。災害が起きたときも、避難所で生理痛になったらしんどいと思います。女性産婦人科医で生理をコントロールしていない人はほとんどいません。「生理痛はあって当たり前」のように思いがちですが、我慢しないで鎮痛薬を飲んだり、ピルで月経をコントロールしたりする方法を知っておいた方がいいのではないかと思います。

生理痛は「あって当たり前」じゃない
生理痛は「あって当たり前」じゃない