知っているようで知らない女性の体のこと。気になる性の悩みや婦人科の病気について、産婦人科医でもあり、性科学者でもある宋美玄さんがフラットに語ります。今回のテーマは「子宮頸(けい)がんの予防ワクチン」です。

9割が予防できるワクチンが承認された

 2021年2月から日本でも子宮頸がんの新しいワクチンが接種できるようになりました。新しく承認された9価ワクチンは、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の約9割に対応したもの。私のクリニックにも母親に連れられて予防接種を受けに来る若い患者さんが増えてきました。その一方で、娘さんの子宮頸がんワクチン接種をどうしようかと悩まれているARIA世代のお母さんも多いと思います。

 子宮頸がんは20代~40代の若い女性に多い病気です。ほとんどはHPVへの感染が原因で、性的接触などにより感染します。HPVには女性も男性も感染の可能性があり、性経験がある女性の50~80%が生涯で1度はHPVに感染するといわれています。それくらい「ありふれたウイルス」なのです。感染しても9割の人ではウイルスが自然に体外へと排出されますが、運悪く長期にわたって体内にとどまっていた場合、一部のウイルスにはがん化するリスクがあります。

 HPVは100種類以上ありますが、がん化する可能性のあるのは15種類ほど。新しい9価ワクチン「シルガード9」は、約15種類のHPVのうち、子宮頸がんの原因となる7つの型に対応します。これで、子宮頸がんの原因となるHPV感染の88%を予防できるようになりました。

 これまで使われていた2価ワクチン「サーバリックス」、4価ワクチン「ガーダシル」は、いずれも15種類のうち2種類(65%)をカバーするものなので、予防できる範囲はかなり広がったといえます。9価ワクチンはまだ自費接種ですが、2価、4価は対象者(小学校6年生~高校1年生相当の女子)であれば定期接種として公費(無料)で受けられます。

子宮頸がんワクチンの定期接種(無料)対象は小学校6年生〜高校1年生相当の女子
子宮頸がんワクチンの定期接種(無料)対象は小学校6年生〜高校1年生相当の女子