ARIA世代の「住まい」について考える本連載。今回は「番外編」として、ARIA世代である積水ハウス住生活研究所所長・河崎由美子さんにインタビューを行いました。河崎さん自身の体験談も交え、豊かな人生につながる活動や住まいのあり方を語っていただきます。

40歳の誕生日、今のライフスタイルにつながる行動を起こした

 積水ハウスで2018年8月に発足した「住生活研究所」。「幸せ」の研究をミッションとし、「住めば住むほど幸せ住まい」をテーマとする研究に取り組んでいます。以前は、同社の「総合住宅研究所」の一部に属していましたが、2019年8月から独立した組織に。さらにパワフルに活動しています。

 発足時から住生活研究所の所長を務めるのが、河崎由美子さん。現在55歳のARIA世代です。父の仕事についてさまざまな国で暮らした幼少期~中学時代を経て、神戸大学の建築学科に進学。積水ハウスに入社後は研究部門でキャリアを積んできました。29歳で結婚し、現在は大学生となった長男を育てながら仕事を続けてきたのです。

 そんな河崎さんは、「住宅のプロ」である以外に、「スイマー」「ランナー」という顔を持っています。今年開催されたマスターズスイミング長水路大会では、メドレーリレーで背泳ぎパートを泳ぎ、金メダルを獲得。フルマラソンへの出場歴は5回を数えます。

 河崎さんがスポーツを楽しむようになったのは40代に入ったとき。「ライフスタイルの分岐点だった」と、当時を振り返ります。

「40歳の誕生日に、自宅近くにあるスポーツジムに入会し、泳ぎ始めたんです。きっかけは、健康診断の数値が思わしくなかったこと。私は学生時代、硬式テニスをしていたので、体力には自信がありました。でも、保健師さんから『若い頃に鍛えた体力で10年~20年はもつけど、そろそろガタが来る頃。40代で鍛え直せば、50代~60代が楽ですよ』とアドバイスを受け、一念発起したんです。息子と一緒に入会し、息子がレッスンしている隣のレーンで、水に浮くところから始めました。上達すると褒められて調子に乗って(笑)、毎週土曜に欠かさず通い続けて。ついに大会に出場するまでになりました。母親が頑張っている姿は、子どもの励みにもなっていたようです」

仕事・家庭以外のコミュニティの存在が、人生を豊かに彩る

 河崎さんが水泳を通じて得たのは、「楽しめる趣味」「健康維持のための習慣」「体力への自信」。しかし、それだけではありません。スイマーのコミュニティで得た「一生付き合える仲間」が、人生の大切な財産だといいます。

「ジムでは60~80代の人たちも泳いでいて、40歳の私は当時一番年下。会社では中堅になっていたけれど、水泳のコミュニティでは『由美子ちゃん』と呼ばれて可愛がってもらい、水泳技術についても人生についても、いろいろ教わることができました。水泳仲間でランニングも始め、今はランニングのサークルにも所属しています。皆でよく食事にも行くし、週末に誰かの家に集まってホームパーティをすることも。今は20~30代の人も参加していて、海辺でのバーベキューパーティを企画してくれたりもします」

 長男がアメリカの大学に進学し、「母親卒業」を実感している河崎さん。「仕事とも家庭とも異なる第3のコミュニティの存在が、人生を豊かにしてくれる」といいます。

「子どもが小さい頃はママ友のコミュニティもありますが、子どもの成長に伴ってつながりが希薄になっていきます。子どもが自立して、育児という大きな役割が1つなくなったとき、趣味を持ち、一緒に楽しめる仲間を持つことはとても有意義だな、と感じます。自分が暮らす地域を改めて見つめ直してみると、いろいろなコミュニティがあるもの。興味を持てる領域を探して、その活動やコミュニティに『飛び込んでみる』ことで、その後の人生がぐんと楽しくなると思います」