自分の時間が増え、家族やパートナーとの距離感が変化し始めるARIA世代にとっての「幸せ住まい」について、積水ハウス住生活研究所長の河崎由美子さんが解説する本連載。前回は駅近の住宅街で両親と同居するARIA世代家族のお宅を紹介しました。今回は、2世帯+隣居という形で郊外で暮らすARIA世代家族を訪問しました。

訪問したお宅
千葉県 M邸・S邸
家族構成/子世帯:貴之さん(40代・会社員)、麻実さん(40代・パート)、愛犬コロン(トイプードル)
親世帯:貴之さんのご両親(70代)と将来同居予定
隣居:麻実さんのお母様・久仁子さん(70代)
M邸(2世帯) 建物/戸建木造、敷地面積:262.62㎡(約79.44坪)、延床面積:122.00㎡(約36.91坪)
S邸(隣居) 建物/戸建木造、敷地面積:170.29㎡(約51.51坪)、延床面積:71.00㎡(約21.47坪)

左から麻実さんの母・久仁子さん、麻実さんと愛犬のコロンちゃん、貴之さん
左から麻実さんの母・久仁子さん、麻実さんと愛犬のコロンちゃん、貴之さん

実家は長崎と静岡。親の緊急時、すぐ駆け付けられない不安が

河崎 お2人が今住んでいる家は2世帯住宅で、将来、貴之さんのご両親と同居予定なんですね。そして、麻実さんのお母様・久仁子さんはすでに同じ敷地内のお宅で「隣居」という形をとられています。ご夫婦それぞれの親御さんと一緒に暮らそうと考えたのは、どんな理由からですか?

貴之さん 私の実家は長崎、妻の実家は静岡と、いずれも遠方です。親に何かあった場合、すぐに駆け付けられない距離にいるのがずっと気がかりでした。私は長男で、いずれは自分が親の面倒をみるつもりでいましたので、こちらに呼び寄せることにしたんです。父は今も長崎で自営業を営んでいますが、いずれ仕事を辞め、車の運転も難しいような状態になったら、同居する予定です。将来を見越して、2世帯住宅を建てました。

麻実さん 私の父は8年前に亡くなり、母はしばらく静岡で一人暮らしでした。最初は大丈夫そうでしたが、だんだんさみしくなってきたのかな……と感じ、「こちらへ来る?」と。何かあったときに傍に人がいないのも不安でしたので、呼び寄せたんです。

手前が麻実さんの母・久仁子さんが暮らす平屋。左隣の平屋が貴之さん、麻実さん、愛犬コロンが暮らす2世帯住宅
手前が麻実さんの母・久仁子さんが暮らす平屋。左隣の平屋が貴之さん、麻実さん、愛犬コロンが暮らす2世帯住宅

河崎 Mさんのお宅は最寄り駅から車で10分の距離ですが、郊外を選んだのはなぜですか?

貴之さん まず、駅周辺には住宅用地がありません。そして、この地域では、郊外のほうが日常生活には便利なんです。大型スーパーまで徒歩3分、ドラッグストアも徒歩5分。ほか、病院も銀行も徒歩圏に揃っています。

久仁子さん 私は車の運転ができません。重いものを買うときは娘に車を出してもらいますが、日常の買い物は徒歩圏内でできる場所がいいと頼んだんです。隣に住んでいるとはいえ、なるべく頼らず生活していきたいですから。