「平屋」には、「動線の短さ」だけではない魅力がある

河崎 平屋にしたのはなぜでしょうか?

貴之さん 私の好みです(笑)。階段の上り下りの必要がなく、生活動線が短くて済みますから。年齢を重ねると足腰が弱くなるわけですから、身体に負担がかからないですよね。ある程度広い土地を確保する必要はありますが、階段がない分、間取りも比較的自由に設計することができます。天井を高くしたり、天窓を設けたりと、開放的な空間を作れるのも、平屋ならではのメリットだと思います。

高い天井に天窓を配し、太陽光を取り込んでいる
高い天井に天窓を配し、太陽光を取り込んでいる

河崎 間取りを設計された際のポイントは?

麻実さん まず、こだわったのは「収納」です。私はアパレルの仕事をしていることもあり、洋服や靴が多いんです。前の家は収納が足りなかったので、この家ではウォークインクローゼットを設けました。夫は「動線を短くしたい」ということで、廊下の壁面クローゼットにスーツやワイシャツを収めて、素早く身支度できるようにしています。

用途に応じた収納スペースをたっぷり設けている。写真は寝室のウォークインクローゼット
用途に応じた収納スペースをたっぷり設けている。写真は寝室のウォークインクローゼット
こちらは、玄関脇のシューズクローク。靴をたっぷりと収納している他、コートやジャケットなどもかけられるようになっている
こちらは、玄関脇のシューズクローク。靴をたっぷりと収納している他、コートやジャケットなどもかけられるようになっている

貴之さん 和室は設けず、リビングを広くとりました。私たちのLDKだけで24.5畳あります。料理・食事・団らん、すべてリビングで完結できるのがいいですね。長く過ごす場所なので、間接照明を取り入れるなど、リラックスできる空間にしました。

 玄関は一つで、入って右側に自分たちのスペース、左側に私の両親が住む予定のLDKを配しています。私の両親の居室と妻の母が住む家の間に、私たちのスペースをはさむ形。私の親と妻の親の居住空間が隣接しないようにして、それぞれのプライバシーを確保できるようにしました。洗濯物がお互いの目に触れないように、というところにも配慮しました。

壁と床を、室内から軒下空間まで連続的に仕上げ、広がりを演出している
壁と床を、室内から軒下空間まで連続的に仕上げ、広がりを演出している
LDKは24.5畳のファミリー スイート。料理・食事・団らん、すべてリビングで完結できる。ファミリー スイートは2019年度グッドデザイン賞を受賞した
LDKは24.5畳のファミリー スイート。料理・食事・団らん、すべてリビングで完結できる。ファミリー スイートは2019年度グッドデザイン賞を受賞した
貴之さん、麻実さんの家(左)と久仁子さんの家(右)の間取り。<br><b>■<a href="http://h.nikkeibp.co.jp/h.jsp?no=410180" target="_blank">より間取りの詳細がわかる<span class="textColBlue">VRコンテンツはこちら</span></a></b>
貴之さん、麻実さんの家(左)と久仁子さんの家(右)の間取り。
より間取りの詳細がわかるVRコンテンツはこちら

河崎 お互いに余計な気を遣わないように工夫されたのですね。3世帯それぞれの心地よい距離感を演出されていてとても素敵です。二世帯住宅部分の設計はいかがですか?

貴之さん 水回りの設備についてはすべて、親世帯・子世帯で別々にしたかったのですが、スペースが足りませんでした。そこで、優先順位を付けた結果、キッチン・洗面所・トイレ・洗濯室は2つずつ設け、バスルームは共用としました。

洗面所は親世帯用(奥)と子世帯用(手前)を別々に設置している
洗面所は親世帯用(奥)と子世帯用(手前)を別々に設置している