それぞれのライフスタイルを尊重し、「分離型」を選択

河崎 2つの家族が1つの家に住むとなると、不安もあったのでは?2世帯住宅の間取りはどのように考えられましたか?

Kさん(妻) それぞれのライフスタイルを尊重するために「分離型」にしました。1階が両親、2・3階が私たち家族の居住空間。父は庭いじりや家庭菜園が趣味なので、両親が暮らす1階には、リビングから続くウッドデッキと庭をつくりました。客間・仏間・来客時の寝室などとしてフレキシブルに利用できる和室も設けています。

1階の親世帯は庭付き。Kさんのお父さまが花を育てている
1階の親世帯は庭付き。Kさんのお父さまが花を育てている

Kさん(妻) 2階は私たち家族が使うLDKと寝室、3階は「子どもリビング」です。2階と3階は吹き抜けで、一体感のある空間です。

Hさん(夫) 私は週に数日、在宅勤務をするので、2階のリビングの一角にワークスペースを設けています。仕事をしているときも、皆と一つの空間に、自然にいられるようにしたかったので。また、戸建てを選んだからには「マンションではできない造りにしよう」と思いました。そこでこだわったのが「キャンティ階段(片持ち階段)」。普通、階段はデッドススペースになって無駄だと思われがちですが、「楽しめるにようにしよう」と。上り下りするだけでなく、ベンチとして使ったり、子どもの遊び場になったりするような造りにしました。

2階のリビング。Hさんがこだわった階段は、シンプルな構造と抜け感が魅力
2階のリビング。Hさんがこだわった階段は、シンプルな構造と抜け感が魅力

玄関は共用。子どもたちは、帰るとまっすぐ祖父母のもとへ

河崎 普段の居住スペースを分けて、お互いのプライバシーを確保しているのですね。別宅に住んでいるような気分なんでしょうか。交流はいかがですか?

Hさん(夫) 完全分離ではなく、玄関は共用です。私は子どもの頃、ひいおばあちゃんまで4世代が同居する環境で育ちました。その経験はよかったと思っているので、子どもたちが学校から帰ってきたとき、まっすぐ自分の部屋に行くのではなく、おじいちゃんおばあちゃんのところに行くような、自由に行き来できるような家にしたいと思ったんです。

Kさん(妻) 実際、子どもたちは学校から帰ると、おじいちゃんおばあちゃんのダイニングテーブルでおやつを食べるのが習慣になりました。その時間、私はまだ就業時間中なので帰宅できませんが、両親と過ごしてくれているので安心です。子どもたちも、前はおじいちゃんおばあちゃんの家に時々遊びに行くだけという関係だったのが、一緒に住むようになってうれしいようです。また、親世帯のリビングも私たちのリビングもゆったりとつくっているので、行き来して一緒に団らんしています。

河崎 お父さま、お母さまはこの2世帯住宅の暮らしをどう感じていらっしゃいますか。

お母さま 孫たちは学校から帰ると、「ただいまー」と言って私たちのところへ来ます。やっぱり孫は可愛いですよ。子どものエネルギーってすごいから、それまでの夫婦2人きりの生活よりもメリハリがついていいですね。近くに30坪ほどの畑を借りているので、孫たちとサツマイモを掘ったりすることも。毎日がにぎやかです。それに、娘と息子(※Kさんの姉・兄)の家族もよく遊びにきてくれるようになりました。前の家よりも快適なのかしらね(笑)

Hさん(夫) 家族同士、大勢で集まる機会が増えたのもよかったですね。子どもたちも、仲良しの従妹たちと遊べるのがうれしいようです。子どもたちが成長して独立しても、ゆくゆくは一緒に暮らせたら幸せかな、と思っています。今、子どもたちは2世帯という暮らし方を経験しているので、結婚した後なども、私たちと2世帯で暮らす発想になってくれたらいいですね。

多世帯の暮らし「カゾク・ト・カゾク」