子どもの結婚や親の老化など、家族に変化が生じてくるARIA世代。そんなARIA世代は住まい方をどう変えていけばいいのでしょうか。「幸せ住まい」について研究している積水ハウス住生活研究所長の河崎 由美子さんに、ARIA世代にとっての「幸せ住まい」の作り方を解説してもらう本連載。今回のテーマは、「多世帯住宅」のつくり方です。

「幸せ住まい」について研究している積水ハウス住生活研究所の河崎由美子所長

 近年、家族のカタチは多様化しています。家族の同居といえば、一昔前は親夫婦と子ども夫婦が同居する「2世帯」が一般的でしたが、積水ハウス住生活研究所の調査によると、最近は、「1.5世帯」「2.5世帯」「3世帯」といった新たな家族構成の世帯が増えています。 

1.5世帯、2世帯、2.5世帯、3世帯の例

 では、ARIA世代の家族構成が今後どうなっていくかといえば、次のような可能性が考えられるのではないでしょうか。

(1)70代~80代になった親と同居
(2)息子または娘夫婦と同居
(3)結婚しない子ども、あるいは離婚して戻ってきた子ども(+孫)と同居

 特に(2)(3)タイプは今後増えていくと見込まれます。多くの女性が結婚・出産後も働き続ける時代、育児サポートを受けるため、親との同居を選択する若い夫婦も増えるでしょう。また、「結婚しなくてもいい」という価値観が広がる中、未婚のまま実家にとどまる人も増えていくと予想できます。

多世帯住宅は「相続税対策」にも有効

 こうした「多世帯」での暮らしは経済的なメリットがあり、日常生活で助け合うこともできます。さらには、「相続税対策」の面でも注目を集めています。2015年の税制改正により、相続税の基礎控除が変更され、変更前よりも多くの人が相続税の課税対象となります。
 
 そこで注目されているのが、「小規模宅地等の課税価格の計算の特例」です。一言でいえば、「二世帯住宅なら相続税が安くなる」というもの。この特例には、「完全同居」のほか、「一部共有」、あるいは建物内で2世帯が「完全分離」している状態でも、登記上1棟の建物であれば適用されるのです(例外もあります)。

 積水ハウス住生活研究所が実施した多世帯同居家族ネットアンケート調査で、多世帯同居した「きっかけ」を聞くと、1位「経済メリット」、2位「いざというとき安心」、3位「親の老後を考えた」でした。

二世帯同居を決めた理由(二世帯同居家族調査/住生活研究所調べ、2019年、n=208)

 親世帯側のメリット、子世帯側のメリットは以下のとおりです。

親世帯側の同居メリット(二世帯同居家族調査/住生活研究所調べ、2019年、n=104)

子世帯側の同居メリット(二世帯同居家族調査/住生活研究所調べ、2019年、n=247)

 このように、多世帯住宅には多くのメリットがあります。しかし、多世帯住宅ならではの悩みや課題も当然ながらあります。例えば、以下のようなものです。

<親と同居する子どもの悩み>
プライバシーがない。親の目を気にせず、家族だけでのびのび過ごす時間がほしい。子育てなど、家族の問題に逐一踏み込まれるのが嫌だ。

<子ども夫婦と同居する親の悩み>
子ども夫婦は共働きのため、育児をサポートしている。孫は可愛いが、頻繁に預けられると負担を感じてしまう。宅配便の受け取りや孫の帰宅に合わせて家にいなければならないなど、行動が制限され、自由度が減った。

 親しき仲にも礼儀あり。多世帯がお互いに心地よく暮らすには、住まいの構造上の工夫やルールが大切だといえるでしょう。

多世帯の暮らし「カゾク・ト・カゾク」