「普通の家族」って何だろう? 特別養子縁組で子どもを迎えた池田麻里奈さん(46歳)。不妊治療から養子を迎えるまでの経験を全3回で語ります。30歳で不妊治療を始め、2度の流産と死産を経験。その後、子宮全摘の手術を受けたとき、「産めなくても、育てることはあきらめたくない」と書いた手紙を夫に渡しました。2回目の今回は特別養子縁組に向けて動きだした夫婦の話です。

(1)不妊治療を経て子宮全摘 「産めないけれど、育てたい」
(2)血縁のない子を愛せるか? 夫婦の運命を変えた電話 ←今回はココ
(3)生後5日目の赤ちゃんと初対面 親子の日々が始まった

 「養子を考えてほしい」という私の手紙に「わかったよ、君に付き合うよ」と答えてくれた夫。

 正直、夫がどんな反応をするか五分五分でした。2人の生活が長く、安定していることに夫は満足していて、それを私も知っていたからです。養子を迎えることはこの暮らしを飛び出して、まるで別の人生を歩むかのような勇気が必要でした。

 自分が妊娠すれば2人の生活に赤ちゃんが加わることは自然な流れですが、養子を迎えるとなると、あえてその道に進む覚悟が必要。まだ後戻りもできるし、突き進むこともできる。自分で選択するからこそ納得するのですが、それと同時に責任の重さも感じていました。

「養子に出せる子はほとんどいない」

 養子を迎えるためには、公的機関か民間のあっせん団体のいずれかに仲介してもらう必要があります。公的機関の窓口は自治体の児童相談所で、自分の居住地で管轄が決まっています。私はまず児童相談所に「特別養子縁組を考えている」と連絡しました。

 1カ月後に面接のため訪問すると、予想はしていましたが、「乳児院や施設は満床(満員)ですが養子に出せる子はほとんどいないんですよ」という説明がありました。保護が必要な子どもは多いのになぜ? と思いますが、特別養子縁組では親権が養親に移るため、実親の同意を得る必要があります。それがなかなか難しく(実親へのサポート不足もあり)、同意を得るためには時間も手間もかかることが背景にあります。

 親と暮らせない子の8割が施設で暮らしている。欧米諸国と比較して日本では家庭養育が低い割合であることはすでに学んでいたため驚きませんでしたが、現実を目の当たりにしてもどかしい思いでした。徐々に変わると信じるしかありません。

特別養子縁組の希望者は里親研修を受講する必要がある。「養子に出せる子はほとんどいない」と言われながらも夫婦で研修に足を運んだ(写真はイメージ)
特別養子縁組の希望者は里親研修を受講する必要がある。「養子に出せる子はほとんどいない」と言われながらも夫婦で研修に足を運んだ(写真はイメージ)