戦禍を乗り越え、開かれた集いの場に

 江戸時代とは異なり、身分による建築の規制がなくなった明治から昭和初めにかけてが、実は和風建築の黄金時代です。吟味した素材、工芸的な技、機知に富んだ意匠、どれをとっても一級品の集まりです。

 藤田が構えた広大な本邸は「網島御殿」と称され有名でしたが、1945(昭和20)年の大空襲で大半が失われてしまいます。しかし、東邸は奇跡的に焼け残り、それが「淀川邸」と名を改め、新たな施設も加えて「太閤園」として59年に開業しました。

 都会の中で自然を味わうぜいたくは今や、訪れる人みなのもの。さまざまな集いに対応した全13室の中で、素材と磨き抜かれた技で織りなす本格会席料理がいただけます。

旬の素材を丁寧に調理し、華やかに盛り付けられた「料亭 淀川邸」の会席料理(写真提供/太閤園)
旬の素材を丁寧に調理し、華やかに盛り付けられた「料亭 淀川邸」の会席料理(写真提供/太閤園)

 藤田伝三郎や、息子の平太郎、徳次郎が残した日本有数の東洋古美術コレクションを公開する藤田美術館は戦後、太閤園淀川邸の向かいの本邸跡地に創設されました。藤田美術館は2022年4月のリニューアルオープンに先がけ、2021年4月から歴史ある庭石や多宝塔などが臨める庭を開放します。桜咲く頃、この場所もいっそう華やぎそうです。

太閤園淀川邸
竣工:1914年

<太閤園 料亭 淀川邸 お店情報>
大阪市都島区網島町9-10
電話:06-6356-1110(受付10~18時)
営業時間:昼12時~15時(ラストオーダー14時)、夜17時~20時(同18時)
※前日12時までの完全予約制
(2021年2月12日現在、3月7日まで実施予定の短縮営業時間です。営業時間は変更となる場合があります。最新情報はお店にご確認ください)

文・写真/倉方俊輔