2021年12月から、大阪で一人暮らしをしていた80代の母との同居・介護生活を始めたタレントの松嶋尚美さん(50歳)。突然の母の体調不良や思わぬ出費など想定外の出来事もある中、2世帯5人暮らしの日常を明るくハツラツとした笑顔で語ってくれました。最終回では、介護と育児の優先順位の葛藤や、家族みんなが“過剰な自己犠牲”にはならない自然体の介護生活について紹介します。

(1)松嶋尚美 母と約30年ぶりの同居で突然介護が始まった
(2)松嶋尚美 母の同居介護、出費が想像以上に多くて驚いた
(3)松嶋尚美 介護と育児のダブルケアでも自己犠牲はしない ←今回はココ

編集部(以下、略) 同居をし始めた2021年12月当初は、介助の必要性の範囲に戸惑い、手厚くケアをし過ぎたこともあったようですが、現在はどのようにお母さんと関わっていますか?

松嶋尚美さん(以下、松嶋) この半年の間、母と一緒に暮らして、体調の良しあしをはじめ、今は遠慮して言ってたな、とか、本気では言っていないなというふうに、言葉の裏にあるサインもずいぶん分かるようになりました。母とは私が20歳になるまで一緒に暮らしていたとはいえ、当時の母は若かった。そこから30年たった年老いた母との暮らしは私にとっても初めてだから、同居して初めて今の母の性格が分かってきた感じです。

子育ての価値観の違いからつい感情的になる母

松嶋 きっと母も同じように思ってるんでしょうね。よく言われるのは、「あんたらは子どもたちに甘すぎて、見てるとイライラする」と(苦笑)。先日、子どもたちが焼き鳥を食べた後に串を振り回したことがあって、夫も私も「危ないよ!」と注意しても言うことを聞かないことがあったんですね。そしたら母が大声で「危ないから串ほかし!」て。子どもたちは大阪弁が分からないから「『串ほかし』って何?」と串を持ったままポカンとした顔で聞き返して。そうしたら、さらに大きな声で母に「だから串ほかしって!」と言われたという(笑)。私が通訳して「串捨てなさいってことだよ」と言ったら、「なんだ、そういうことか」と理解して串を置いてました。

―― 親世代と子ども世代の価値観のすれ違いは、同居生活に起こりがちなモヤモヤの1つですね。緊張感あるすれ違いの経験さえ、笑いに変えてしまう松嶋さんがすてきです。

松嶋 母は娘(8歳)がお風呂上がりに裸でちょろちょろしているのもすごく気になるらしくて。同居して間もない頃は、優しい口調で「パンツだけははきなさいね」と言ってましたが、全然言うことを聞かないから、最近では「パンツはけーー!」って怒鳴ってます。お母さん、最近だんだん元気になってるとちゃう? みたいな(笑)。それは冗談にしても、私の言うことを聞けー!って言えるのは、母も子どもたちもお互いに打ち解けてきた証拠に違いないと思っています。

「同居した母とのちょっとしたすれ違いはもちろんあるけれど、お互いに遠慮がちだった同居当初に比べて、家族の距離が近づいてきた証拠だと思っています」(松嶋さん)
「同居した母とのちょっとしたすれ違いはもちろんあるけれど、お互いに遠慮がちだった同居当初に比べて、家族の距離が近づいてきた証拠だと思っています」(松嶋さん)