キャスターとして第一線を走り続ける長野智子さんが今回話を聞いたのは、日本トップリーグ連携機構の川淵三郎会長です。2021年はいわゆる「森発言」後に注目を浴びましたが、実は長年にわたって女子スポーツ界をエンパワーしてきた川淵会長。東京五輪を終えた今の思い、日本初の女子プロサッカーリーグWEリーグに寄せる期待とは? ますます白熱する(下)をお届けします。

(上)川淵会長「僕の世代が長く居座るのは、よくないんです」
(下)川淵会長「一度の失言で全否定する社会はどうなのか」 ←今回はココ

「僕ら年配の者には境目が分からない」

 女性には年下でも「さん」付けで呼ぶという川淵氏は、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会評議員会議長でもある。元組織委員会会長の森喜朗氏による「女性の多い会議は時間がかかる」という発言を巡っての騒動をどう見ていたのだろうか。

 「あの発言はちょっとね、言わないほうがよかったとは思います。でも普段の森さんを知っている人は、女性蔑視で言っているとは誰も思わないんだよね。やっぱりある年齢以上になったら普段言い慣れていることを、みんなの前でつい言ってしまって、それを初めて聞く人からまずい反響があるっていうのは、僕らの年代にあり得ることだなと思う」

 森発言に代表される表現は、川淵氏世代の人たちが生きてきた男性中心の経済・社会状況ではごく当たり前に交わされていた「男ウケするもの」だったというが、川淵氏自身は10年ほど前から徐々に変化を感じてはいた。

「最近は涙もろくて、すぐ泣くんだよ」と話す川淵氏
「最近は涙もろくて、すぐ泣くんだよ」と話す川淵氏

 「特に今年くらいから急にジェンダーに対して皆さん関心を持って厳しく、難しくなったよね。この前もね、“女々しい”って言葉を使っちゃまずいのかな、とか。サッカー協会でも今日のヘアスタイルはいいねとか僕は割合そういうことを言っちゃうのだけど、喜んでもらえることもあれば、セクハラにもなるとか。そういうダメとOKの境目が相手によってあるとか、正直褒めることがどうしてセクハラになるのか、僕ら年配の者にはよく分からない」

 森氏の発言にしても良くなかったと思う一方で、森氏特有のサービス精神ゆえのことであってそこまで大ごとになるとは思わなかったと川淵さんは言う。