母親として初の日本代表選手が誕生

 「アテネ五輪の前に、代表選手の中で結婚していたのが宮本ともみ選手だった。だから彼女に『次の五輪まで4年あるから子どもを産んで、また代表選手に復帰してほしい』と話したんだ。これって今だとセクハラと言われるんだよね、きっと。

 ただ当時は欧米の女子サッカー関係者に話を聞いても、素晴らしい選手で人気が出ても出産をして引退をしてしまうとファンが離れてしまって、なかなか女子サッカーが発展しないと言うんだよ。才能ある選手が結婚、出産をして、また代表選手に戻ることは選手にとってもモチベーションになるし余裕もできるだろうし、ファンにとってもうれしいのではないかと思ったんだよね」

 その後宮本選手は出産をし、見事日本代表にも復帰。母親として初の代表選手となった。その際、日本サッカー協会は民間のベビーシッターを雇ったり、宮本選手の母親が遠征に同行できるようにしたりするなどサポート。前例のなかった改革が川淵氏のもとで行われ、現在は岩清水梓選手が出産後も現役選手としてチームを引っ張っている。

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取材・文/長野智子 写真/洞澤佐智子