キャスターとして第一線を走り続ける長野智子さんが今回話を聞いたのは、丸紅の柿木真澄社長。2021年1月、柿木社長は、新卒総合職採用に占める女性比率を2024年までに4〜5割にするという数値目標を提示し、注目を集めました。その真意とは? 長野さんが迫ります。

同質的な集団から脱却しなければ生き残れない

 大手総合商社の丸紅が「総合職の新卒採用に占める女性の割合を現状の2~3割から、2024年までに4~5割程度に引き上げる」と2021年1月に発表したとき私は感嘆した。私事ではあるが、父、兄、夫までもが商社勤めという立場から見て、商社というのは残業、海外出張に家庭そっちのけで対応する「ザ・男性社会」だという印象しかなかったのだ。その印象に違わず現在丸紅の総合職は約3300人、そのうち女性はわずか約1割である。そんな中、新卒採用の女性総合職比率を5割まで引き上げるという判断を下したのが、2019年に社長に就任した柿木真澄氏だ。

柿木社長にあった問題意識とは?
柿木社長にあった問題意識とは?

 世界経済フォーラムが2021年3月に発表したジェンダー・ギャップ指数で、世界156カ国中、日本は政治分野で147位、経済分野では117位である。政府も女性活躍と旗は振るが、今回の衆院選の女性候補者は17.7%、民間企業の女性登用も遅々として進まないのが現実だ。企業も政府も「登用したくてもポストに合う女性がいない」「女性がなりたがらない」「そもそも女性候補や社員が少ない」と同じような理由を挙げる。

 こうした状況において、なんと丸紅は3年以内に4~5割という期間と数値目標を提示したのだ。やはり一番聞きたいのは、なぜ今「女性総合職を増やす」という決断をしたのか、ということである。政府目標やSDGsなどグローバルムーブメントに対応するためのものなのだろうかと考えていた私にとって、柿木社長の答えは意外なものだった。

 「ここ数年、ビジネスの形が変わってきました。お客様の要望が明らかに変化してきたんです。我々世代が若い頃、要望はシンプルで原始的だった。例えば、“衣食住”に関わるもの。家が欲しいとか車が欲しいとか。何時までにどこそこまで届けてほしいとか、注文がシンプルで乱暴というか(笑)、男性の粗っぽさのある発想がフィットする世界でした。

 ところが、最近はそもそも個人の要求自体がはっきりしなくなってきた。こういう雰囲気のもの、とか、ほぼテイラーメードでその人だけのものといった繊細な要望に変化してきたのです。むしろ、こちらからお客様の気持ちを読んで提案させていただくなど、これまでのような均一的な発想では対応しきれなくなってきました」

 つまり柿木社長は環境変化に対応するためには同質的な集団から脱却しなければならないという思いから、「女性総合職を増やす」決断をしたのだという。

 「これまでのビジネスモデルを引き続き拡張していくことに限界があると感じていました。あと10年たてば、今のビジネスはなくなるかもしれない。つまり、新しい需要を掘り起こす必要があるわけです。男女比1:1の社会で、9割が男性という同質性の高い組織が、ライフスタイルや価値観の変容してきている社会の課題を解決できますか?