長野智子さんが今回話を聞いたのは、自民党の「女性認識」について論じた著書を出版した安藤優子さん。(下)では自民党が「家庭長」という言葉に込めた意味、母親世代の価値観を否定しないこと、そしてイエ中心主義の被害者にまで話が展開します。

(上)安藤優子 生きづらい社会を変えるには面倒臭い女が必要
(下)安藤優子&長野智子「女は家を守る」自民党の戦略だった ←今回はココ

 世界でも独特な日本の「女性に対する社会認識」を可視化するために、安藤優子さんは上智大学大学院の博士課程で、戦後の自民党における政治指向に注目。自民党当選議員のキャリアパスや傾向を分析することによって、自民党の「イエ中心主義」、つまり女性が「イエの構成員」であり「イエに従属する存在」という指向を戦略的にとってきたことを研究した。

「女らしく」「女はわきまえろ」を可視化したかった

安藤優子さん(以下、安藤) 日本の女性に対する社会のまなざしみたいなものはものすごく抽象的じゃないですか。「伝統的」とかそういういろいろな言葉で語られはするけれども、きちんとした可視化はできてないというのが私の中のすごいモヤモヤ感で。まずはしっかり可視化したかったんです。

長野智子さん(以下、長野) 風習とか文化とか、潜在的な意識や共通認識になっているものですね。

安藤 そう。それってもうちょっと可視化するとどういうことなんだろうというのが隠れテーマというか。いつも曖昧模糊(もこ)とした抽象的な言葉、例えば「女らしく」とか「女はわきまえろ」とか、そういう言葉で語られてきた認識というのはどんなものなのかというのを可視化したかったというか具体化したかった。

 それらはどういうもので、どういう風につくられてきたのかを研究してみたら、何だ、私たちは自民党の手のひらの上に乗せられていたわけか。本当にうっかりしていたなと。

「国の政策に女性へのリスペクトがない」と指摘する安藤さんが気付いた、驚愕の事実とは?
「国の政策に女性へのリスペクトがない」と指摘する安藤さんが気付いた、驚愕の事実とは?

長野 これだけ長く自民党の取材をしてきた安藤さんでも「見落としていた」という驚きがあったんですか。

安藤 そう、一番見落としていたのは、自民党が保守政党として戦後再生していくための「党戦略」としてこういう女性認識を再生産していくという点。何となく伝統的に植え付けられてきたように思っていた女性に対する認識が、実はものすごく明快な党の戦略として、意図を持って今日この日まで常に再生産されてきたわけです。ある種の驚愕の事実じゃありません?