長野智子さんが今回話を聞いたのは、自民党の「女性認識」について論じた著書を出版した安藤優子さん。報道番組のキャスターとして第一線を走り続けた2人が報道の世界で感じた疑問点や後悔、そしてこれからの課題と考えていることはーー実はゆっくり話すのが初めてだという2人。縦横無尽に語り、そして共鳴します。

(上)安藤優子 生きづらい社会を変えるには面倒臭い女が必要 ←今回はココ
(下)安藤優子&長野智子「女は家を守る」自民党の戦略だった

 安藤優子さんとゆっくりお話をするのは今回が初めてだ。私が「ひょうきんアナ」としてバラエティー路線を爆走していた1980年代から海外を飛び回り、要人たちのインタビューをこなし、報道現場の最前線で活躍していたのが安藤さん。私はいつもその背中を勝手に追っていた。

「あの生意気な女は何なの」と総スカンを食らった

安藤優子さん(以下、安藤) 私がテレビ朝日の番組を卒業してフジテレビの報道番組に移った後に、長野さんがテレビ朝日の報道番組を担当したという。そういう意味ではすれ違ってたって感じですよね。

長野智子さん(以下、長野) たまに国会とかの現場でごあいさつするくらいで。

安藤 実は今回長野さんにお会いするにあたって、長野さんが今どういうベクトルに向いてらっしゃるのかなとネットなどで拝見したんですが、結局同じベクトルなんだなって。だからすごく私はうれしかったんです。

長野 私も今回安藤さんが出版された本(『自民党の女性認識―イエ中心主義の政治指向』、明石書店)を読ませていただいて、女性議員の少なさに強い問題意識を持たれていると知って、おーって。テレビ業界で長くキャスターをしていると、やはり問題意識はここなんだとうれしかったです。私も今、超党派の女性国会議員と勉強会をしていて。

長年、報道の最前線を走ってきた2人。まずは女性議員が少ないことの問題点を語り合った
長年、報道の最前線を走ってきた2人。まずは女性議員が少ないことの問題点を語り合った

安藤 「クオータ制実現のための勉強会」ですよね。

長野 はい、2021年5月に立ち上げて毎月開催しています。安藤さんが日本での女性国会議員の少なさとその背景について研究しようと決められたのは何年前なんですか。

安藤 7年ぐらい前かな。

長野 そんなに前ですか。

安藤 女性議員が本当に少ないわけですよ(編集部注:衆議院の国会議員比率9.8%、2022年8月)。ジェンダーギャップが本当にひどいとか、結構メディアでも10年以上前から取り上げているのに全然変わらない。結局のところ問題解決をけん引していかなきゃいけないエンジンである国会議員たちの意識が政党も含めて変わらない限り、この国は絶対変わらないなって。やっぱりこれは国会に踏み込まないとだめなんだと。

長野 まったく同じ考えです。もちろん経済界、地方議会など多角的に改善していくべき課題だけど、どちらかというと本丸である国会の意識が一番遅れているなと感じます。

安藤 報道をやっていたらそう思いますよね。そもそも報道自体が思う以上に男性の牙城だし、その意識というのは見る側にもずっとあったわけじゃないですか。

 テレビ朝日のプロデューサーにスカウトされて報道番組に出演したばかりの頃の話なのですが、1983年にベニグノ・アキノ元上院議員が亡命先のアメリカから帰国してすぐ、フィリピンの空港で撃たれたんですね。その様子をVTRで説明した際に、私が原稿に自分の言葉を交えてリポートしたわけですよ。そしたら視聴者から「あの生意気な女は何なの」と総スカンを食らって。

長野 私は、超かっこいいなと思って見てたんですけど。