キャスターとして第一線を走り続ける長野智子さんが今回話を聞いたのは、弁護士で日本セーリング連盟常務理事の望月宣武さん。2022年、日本セーリング連盟はD&Iから一歩踏み込んだDEI(デイ)を宣言しています。DEIとは何か、DEIが推進されると組織はどう変わっていくのか? 長野さんが迫ります。

 春に世界経済フォーラム(WEF)が発表する「ジェンダーギャップ指数」。2021年、日本はG7では最下位、アジア諸国でも韓国や中国、ASEAN諸国より低く、156カ国中120位だった。今年の発表は遅れているそうだが、さて昨年の衆院選でさらに女性議員を減らした日本はどうなることやらと遠い目になる。

「ダイバーシティだけ」になっていませんか

 「既に多くの企業が『D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)』推進を掲げていますが、日本ではDiversity(多様性)ばかりに目が向く傾向がありますよね

 そう指摘するのは、男性の立場から組織における女性幹部の登用や多様性の重要さを訴え、自ら推進に取り組んでいる、弁護士で日本セーリング連盟常務理事の望月宣武さんだ。望月さんは、D&Iを達成するために必要不可欠な「Equity(エクイティ)」(公平性と公正さ)の視点が抜け落ちていることにそもそもの日本の課題があると言う。

 エクイティとは、「すべての人が公平に扱われ、機会が与えられ、進歩することであると同時に、一部のグループの完全な参加を妨げてきた障壁を特定し、排除する努力をすること」だ。つまり、いくらD&Iを掲げても、Equityがなければ達成は不可能だというのである。

Equity(エクイティ)はEquality(イコーリティ、平等)と比較すると分かりやすい。平等はすべての人に同じ高さの踏み台を与えること、公平はすべての人の頭の高さを同じにすること
Equity(エクイティ)はEquality(イコーリティ、平等)と比較すると分かりやすい。平等はすべての人に同じ高さの踏み台を与えること、公平はすべての人の頭の高さを同じにすること

 実際、望月さんが所属する「日本セーリング連盟」は、2022年いち早くD&IにEquityの「E」を加えた「DEI」(Diversity, Equity & Inclusion、デイ)推進を宣言したことで注目された。そこには東京五輪・パラリンピックにも組織委員会の一員として関わった望月さんの「今こそスポーツ界は変わらなければならない」という強い問題意識があったという。

 エクイティとは実際に何をすることなのだろうか。

「日本ではダイバーシティばかりに目が向く傾向があります」(望月さん)
「日本ではダイバーシティばかりに目が向く傾向があります」(望月さん)