20年続いている、夫婦の「共同作品」

―― 出会いは電通で、ですね。

三井さん はい。私が先に派遣社員として働いていた部署に、夫が新入社員として配属されてきたのがきっかけでした。

 広告マンらしからぬ、地味でおとなしい男子だなと思っていたら、私が辞めるときの送別会で突如、正体をあらわしました(笑)。

福里さん 昔ブームになった青春ドラマ『スクールウォーズ』の主題歌を、完璧なナレーション付きで歌い上げました。

―― 以後、それぞれの場でキャリアを歩んでこられたお二人ですが、結婚以来20年以上続いている「共同作品」が、この年賀状ですね。

毎年、12月初めから「今年は何にしよう」と考え始めるという文庫本カバー風の年賀状。1年間の二人の生活から題材を取ったコピーは思わず頬がゆるみます
毎年、12月初めから「今年は何にしよう」と考え始めるという文庫本カバー風の年賀状。1年間の二人の生活から題材を取ったコピーは思わず頬がゆるみます

三井さん はい。夫の後輩のアートディレクターにデザインをお願いしたら、「文庫本のカバー風にしてみては」というアイデアをいただいて。その年を振り返って、私たちの生活を言い表すコピーを考えて、あたかも本のタイトルのようにレイアウトしてもらうのが定例に。第1作は結婚した翌年の年賀状で、『理由なき結婚』というタイトルでした。

福里さん 『匂いが消えない』は、このマンションに引っ越してきた時のもの。前の住人が外国人で、芳香剤をよく使っていたのか、すごく匂いがキツくて……。

三井さん 昨年作った最新版はこれです。『体育の日はかわり平成も終わる』。私たち、実は平成10年10月10日が結婚記念日です。結婚したときは10月10日が「体育の日」で祝日だったので「10・10・10で覚えやすいし、結婚記念日は毎年休みになるね」と考えていたんですけど。

福里さん いつのまにか法律が変わって、10月10日が祝日ではなくなり、しかも平成も終わって歴年数も分かりにくくなってしまった。そんな悲哀を込めました。

―― 20年分以上そろうと圧巻ですね。楽しみにされている方も多いのでは。

福里さん 大したことをしているつもりはないのですが、年賀状を送るという行為自体が希少になっていて珍しくはあるでしょうね。続けるうちに、引っ込みがつかなくなっているだけという説もあります(笑)。