地方に拠点を持ったきっかけは東日本大震災

―― いわゆる「デュアルライフ」と呼ばれる2拠点生活を実践されている方の話は時々聞きますが、3拠点というのはあまり聞きません。

松尾さん 私たちも「3拠点生活しよう!」と思って始めたわけではなくて、自然のなりゆきなんです。まず、東京と軽井沢の2拠点生活になりました。きっかけは東日本大震災。私のメンタルが弱ってしまって、仕事も生活も東京を唯一の柱にした生活を続けることが不安になった時期があったんですね。「東京以外にもう一つ、拠点を持つといいんじゃないか」と夫が提案してくれて、軽井沢にも住まいを持つことに。

 さらに福井にも行くようになった理由は、私の創作の幅を広げるためです。50歳を迎える頃に「絵を描く以外の表現にも挑戦したいな」という気持ちが膨らんで試行錯誤していると出合ったのが陶芸の世界。たまたま友人が福井に窯を持っていたので通わせてもらうことになり、その翌年にはアトリエを持つことになって、夫も行き来するようになりました。

夫婦関係は硬さではなく、折れないことが重要

―― 40歳を過ぎると、なんとなく「自分たちのライフスタイルはこういうもの」と確定したような感覚を持ちがちですが、お二人はとても柔軟にライフスタイルを変えているのですね。

佐々木さん ライフスタイルを決めてしまうと、それが壊れた時に怖いでしょう。だから、「こういうもの」と決めないほうが、気が楽。これはライフスタイルに限らず、仕事も人間関係も夫婦関係も同じで、常にしなやかであることが重要。「強さ」とは「硬いこと」ではなく「折れないこと」なんですよ。

「将来はこうしたいねという話もあまり二人で話しません」(松尾さん)「いろいろな試みや実験をして移動しながら暮らしています」(佐々木さん)
「将来はこうしたいねという話もあまり二人で話しません」(松尾さん)「いろいろな試みや実験をして移動しながら暮らしています」(佐々木さん)

松尾さん たぶん大きな意味での価値観がすごく近いという前提があるのかも。そして、その価値観の変化も同じようにたどってきた気がする。昔は高級志向だったけれど、今はシンプルライフが好き。

佐々木さん 旅先も高級リゾートから、今は同じ海外でも、住まい感覚で借りられるコンドミニアムに。地元の食材で料理をするのを楽しんでいます。