夫婦で生活のルールは、決めない

健さん  別に「どうしようかと話していた」だけであって「決めた」わけじゃない。ルールとして決めるから、相手がそうしなかった時に腹が立つでしょう。最初からルールを決めなければいいんです。

典子さん まぁ、でも、フツウはイラっとする妻は多いでしょうね。夫婦間で何か決めないと不安になるのかもしれないし。

健さん  典子さんだって、気にせず「暗黙のルール」を破るじゃない。昨日の夜、僕が作って残しておいた味噌汁を冷蔵庫に入れるの忘れたでしょう。ちゃんと入れておけば、今朝も食べられたのに……。

典子さん イラッとされたのは気づいたけれど、「忘れちゃった!」って(笑)。

「全然謝らずに、しれーっとしてましたね、私」(典子さん)「いつも、そんな感じなんですよ(笑)」(健さん)
「全然謝らずに、しれーっとしてましたね、私」(典子さん)「いつも、そんな感じなんですよ(笑)」(健さん)

健さん  ルールにしていないから、怒りようがないしね。「生活のルールを決めない」というのは、お互いにストレスを増やさないコツですね、うちの場合。僕も彼女も、他人の言うことに影響されたくない超マイペース人間なので。

典子さん 結婚したとき、彼の友人のお母さんから「あなた、よくこの人と結婚したわねー」と感心されたんです。肉親じゃないのに(笑)。まぁ、私も人のことは言えません。夫婦といえど他人同士なので、相手が自分の言うことを聞いてくれるなんて期待しません。

夫婦間の小さな衝突は大げさにしない

健さん  でも、若い夫婦の話を聞いていると、割とフォーマルな会議のように、夫婦の話し合いの時間を決めている人、いますよね。「話があるから○時に帰ってきて」とか、家族会議を定例化するとか。

 僕は夫婦もビジネスも、「インフォーマルな対話」でものごとを進めるほうがいいんじゃないかという考えです。ルールを決めたことで、かえって深く考えなくなってしまったり、いさかいが増えたりと、弊害のほうが大きいんじゃないかな、と。

典子さん 何も決めずに、トライ&エラーを繰り返せばいいんだろうなと思います。夫婦間で起きるエラーなんて、誰に迷惑をかけるものでもないから、トラブルとも考えていない。これはお店の若いスタッフにも常々言っていることで、「解決できることはトラブルのうちに入らないから、お客様からご意見をいただいても萎縮しないでいいんだよ。失敗してもいいんだよ」と。

 他人同士の小さな衝突を大げさにとらえないことって、家庭外の日常生活でも大事かなと思っています。相手を説得しようとして、どうしてもうまくいかなかったら諦める。だって、他人は自分の思い通りにならない。長く連れ添った夫婦同士でも、いい意味での諦めを保てたら、相手に過剰な期待をしなくて済む。そのほうが自分の精神衛生上もいいはず。

―― 結果、お互いを尊重する関係性も築けそうですね。

健さん  僕たちが唯一、真剣に話すとすれば、猫の「終活」についてくらいかもしれないなぁ。