二人をつないだのは「子ども時代のトラウマ」
円さん 僕もずっと「できないことを指摘され、叱られ続ける子ども時代」を送ってきたから、ちょっとでもミスをするとものすごく自分を責めてしまう。かなりネガティブ思考の人間だったんですよ。彼女と結婚して一緒に暮らし始めてから今年で10年になりますが、この10年間でかなり変われた。
奈緒さん 一緒に暮らし始めて最初の5年くらいはぶつかり合うこともあったし、私も1対1の人付き合いに慣れるまでに時間がかかったんですが、ここ数年ですごくラクになって、心を解放できるようになりました。
―― 何が二人を変えたんですか?
奈緒さん 「褒め実験」です。
「褒める」「放置する」で好循環
奈緒さん つらかった子ども時代にどういう言葉をかけられたかったかを考えると、やっぱり褒めてもらいたかったのかなと思って。彼も褒められた経験に飢えていたから、「試しに褒めまくってみたらどうなるんだろう?」と思って、なんでも「すごい」「いいと思う」と言葉をかけるようにしたら、彼がどんどん前向きになり言動も穏やかになってきて。
今でも、道に迷ったり忘れ物をしたりした時に彼はしょっちゅう自分にキレていますが、そういう時は放置して待つ。テンパっている時に怒られると余計焦るって、私も経験上よく分かっているので。実際、放っておくと彼は通常モードに勝手に戻りますし。「怒っていることに対して怒る」のは火に油を注ぐだけで、怒らないほうがずっと合理的なんだなと思って、日々「褒める」に徹しています。
円さん 僕はたまに勢いに任せて衝動買いしても止められないから、かえって冷静になって「あのー、なんで止めないの?」って聞くこともある(笑)。昔も、「会社を辞めようかな」と相談した時、「いいんじゃない」って。