―― とても仲良しな日常が伝わってきますが、お二人の出会いのきっかけは?

妻の第一印象は「やたら派手な服装」

円さん 出会いは2007年。僕の勤め先で彼女が派遣社員として働いていたのがきっかけです。といってもプロジェクトは違って一緒に働いた経験はなし。ただ、やったら派手なファッションで目立つ女性がいるなとは思っていました。

奈緒さん 私、10代の頃にブラジルで過ごした影響でちょっと色彩感覚が違うみたいで。あと、その前に働いていた映画配給会社の女社長が露出過多だったこともあって、保守的な職場では浮いていたみたいなんです(笑)。当時は、美大卒業後に一度諦めかけたアート活動に振り切ろうかと迷っていた頃でした。

円さん 同僚の女性から「彼女、今日が最終出社日です。個展を開催するために辞めるそうですよ」と聞いて、なんの気もなく「ああ、そうなんだ。じゃ、個展の案内が来たら教えて」と返答したら、わりとすぐに男女4人で食事会が設定されて。その同僚が僕の上司を狙っていただけなんですけどね(笑)。食事会の途中から僕ら二人は完全に放置されたんだけど、話してみるとめちゃくちゃ面白かった。実は当時付き合っていた彼女がいたんですけど、もう気持ちが離れてしまっていたこともあって、その日を境に早急にクロージングし、別れて24時間後に彼女に交際を申し込みました。

奈緒さん 2007年の12月のことだよね。わたしは30歳だった。

円さん 僕は38歳。彼女の誕生日にピアスをプレゼントしたら、その日のうちに片方なくされて(笑)。それまで結婚願望はなかったのに、彼女とだったら人生を楽しめそうだとプロポーズしたんです。

円さんが持っているのは、出会ってすぐのバレンタインデーに奈緒さんがつくった円さんのオブジェ
円さんが持っているのは、出会ってすぐのバレンタインデーに奈緒さんがつくった円さんのオブジェ

奈緒さん 付き合って1カ月半しかたっていなかったので、プロポーズは冗談かと思ったら、どうやら本気だって分かって。でも「初個展を終えるまでは忙しいし、準備しながら仕事もしないといけないし」って言ったら、「お金の面はサポートするから個展に集中すればいいじゃん」って。それでもいいのかなと思えて、翌年の2008年に入籍しました。

―― 結婚してから、お互いに変化はありましたか?

奈緒さん 心理的に落ち着いたと思います。私たちの共通点として、「子ども時代に褒めて育てられなかったトラウマ」というのがあるんです。私は「できない子だ」と言われ続けて自己肯定感を育めなくて、社会にうまく適合できていないんじゃないかって不安が常にあったんです。